第31話「焼いて!」
外もすっかり暗くなりました。
空にはまんまるお月さまが輝いています。
ランタンの明かりがぼんやりと辺りを照らしています。
ジゅぅぅーと網に刺さった串打ち魚が焼かれています。
「さかなぁ……さかなぁ……さかなぁ……」
ロティさんは我を忘れて興味津々のご様子。
それを見ていたジュレ先輩はハッとしました。
「まさか……ロティちゃんの呪いっ!?」
「さかなぁ……さかなぁ……さかなぁ……」
「マリ、ロティちゃんを魚から引き離して!」
マリネ先輩はロティさんを引き離します。
「さかなぁ……あ、あれっ……マリネ先輩?」
「ロティ、ちょっとそこで座って待ってろ。もう魚が焼けるから」
「は、はい……」
「前のポタージュのときはなんも無かったからてっきり呪いなんてないんか思っとったけど、うちもしかしたら分かったかもしれん」
「腹ぺこ」と魚の焼き具合をチェックしながらポワレさんは言います。
「そう、ロティちゃんは腹ぺこになった状態で美味しそうな料理を目の当たりにすると我を忘れてしまうんや!」
「なるほど、今までロティが呪い状態になって失敗したときは、全部腹ぺこ状態だったというわけか……」
・・・・・・・
「いやただの食いしん坊じゃねぇかよ!」
たまらずといった風にマリネ先輩は叫びます。
「いやまぁそうやねんけど。でも普通腹ぺこになっても我を忘れて料理を焦がすことなんかないやろ? それに野菜とかは単純に技術不足なだけやったんやし」
「まぁその辺については一旦お預けだ。ほら、魚も焼けたことだし、ロティも腹ぺこすぎて憔悴し切っている」
マリネ先輩はロティさんのほっぺをぷにぷにして言います。
「さかなぁ……さかなぁ……」
☆
『いただきまぁす』
ロティさんは手渡されたイワナの焼き具合に目を輝かせています。
炭火でこんがりと焼けたイワナ表面にかぶりつきます。
パリッと皮が弾け、中のふわふわな身がとてもジューシーです。
炭火で焼くとふわふわ度が増し、口内に旨味が広がります。
皮の絶妙な塩気が……たまりません。
かぶりついた先からほかほかな湯気が立っています。
「うぅ………んまいっ!」
しっかりと炭火焼きしたイワナは、尻尾から頭まで食べられます。
尻尾はかりっとしていて、頭部は油が溜まっているので塩との相性が抜群に良く、唐揚げ感覚で食べれます。
絶品です。
「おいしい」
「皮がまた美味いなぁ」
「うっっめぇぜぇこれはよぅ!?」
皆さん大変ご満悦なご様子です。
「およよ、しぇんせえぃにもお魚しゃん、くだ、ひゃいよぉ」
のそのそとやって来てしゃっくりを繰り返すアンチョビ先生にも、鮎の塩焼きをポワレさんが情け憐れむような目で手渡しました。
「鮎です」
「ひゃあぁあ、鮎ちゃんねぇ。はゔっ、はゔ、はゔっ! これゃあ! うっみゃあああ!」
くびくびとビール瓶を煽り、鮎を頬張るアンチョビ先生は芝生に倒れて奇声をあげます。
四人は白けた目で奇行を繰り返すアンチョビ先生を見つつ、楽しい食事はまだ続きます。
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