第2話「なんかいい匂いがしますっ!」
私立百合ヶ丘学園に入学した杏蜜さんは部活に迷っていました。
杏蜜さんはてくてくとお城のような豪奢な校舎を歩きます。
白を基調とした制服は早くもお気に入りです。
背中まで伸びた髪も入学を機にお母さんに進められて肩ぐらいまで切りました。
何もかも新鮮な気持ちの杏蜜さんはドキドキとワクワクに包まれています。
それも百合ヶ丘学園では、お嬢様が多く通う女子校なので優雅な挨拶が飛び交いうことも日常茶飯事。
「ごきげんよう」
「うふふ。ごきげんよう〜」
杏蜜さんは中庭のテラスにでます。
美しい緑色の芝生が広がり、花壇には色とりどりの花が咲いていて綺麗です。
アンティーク調のガーデン用のデスクとイスには誰もいません。
ですが何か物陰が動いた気がしました。
おや、なぜか小さな真っ白い子猫さんがいました。
ミャア。
「おいでぇ〜おいでぇ〜」
杏蜜さんはそろそろと子猫さんに近づきます。
ミャア(コンチワ)と子猫さんは杏蜜さんに近寄ります。
子猫さんは杏蜜さんの手を鼻でクンクンと嗅いでからペロペロと舐めました。
おや、続いてもう一匹の黒い子猫ちゃんもどこからかやってきました。
「おいでぇ〜おいでぇ〜」
ミャア(チワ)と黒い子猫さんも杏蜜さんの膝枕で落ち着いてしまいました。
おやおや、どこからでてきたのかまたまた子猫さんが四匹もでてきたではありませんか。
「おいでぇ〜おいでぇ〜」
ミャア、ミャア、ミャア、ミャアと子猫さんは杏蜜さんと戯れます。
昔から杏蜜さんには子猫がたくさん寄ってくる特技がありました。
子猫さんたちと戯れていると、杏蜜さんは何かの匂いを嗅ぎつけます。
クンクン、クンクン。
「ごめんね子猫ちゃん。またね」
ミャア(どこに行くのさ)と子猫さんたちは言います。
「分からないっ」
杏蜜さんは校舎に戻ります。
「あら、ごきげんよう」
「まぁ、ごきげんよう」
「杏蜜さんもごきげんよう」
「ごきげんですっ!」と杏蜜はさん一人校舎の中を激走しました。
あんまり校舎を走るのは良くないのですが大丈夫でしょうか。
安心してください。実は杏蜜さんは足がとてつもなく遅いのです。
傍から見れば早歩きしている子の方が早いかもしれませんが。
本人は至って全力疾走しているのですが。
「なんかいい匂いがしますっ!」
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