腹ぺこロティ!

文鷹 散宝

第1話「ユメみる女の子」

 ある日のことです。

 小さな女の子は家族でフレンチレストランに連れて行ってもらいました。

 お父さんとお母さんと二つ年上のお姉さんと仲良く美味しいフルコース料理を食べました。

 料理を食べ終えたあとになって、サプライズで女の子の名前が書かれたホールケーキが出てきました。

 小さな女の子は驚き飛び跳ねるように喜びました。

 その日は女の子のお誕生日だったのです。

 コックコートを着た綺麗なお姉さんが「お誕生日おめでとう」と言ってくれました。

 ケーキはとろけるように甘くて、女の子は嬉しさのあまり感激しました。


 お母さんとお姉さんと手を繋いだ帰り道に女の子は言いました。

「わたしもお姉さんみたいなコックさんになりたいなぁ」


 女の子はユメを見ていました。

 だけど女の子はお料理が壊滅的に……すこうしだけ下手でした。

 パンケーキを作る時に八個パックの卵を全部殻ごと割ってしまうこともありました。

 カレーを作る時には子供用の包丁を握る女の子を見守るお母さんは「アンちゃん。お手々は猫さんですよ」と心配そうに言います。

「はあい。エイッ! テイッ!」

 女の子はあちこちに皮を剥かずにぶつ切りにして人参をリビングのソファでテレビを見ていたお父さんの後頭部にまで飛ばしました。

 お母さんは「あわわ……どうしましょう」と青い顔をしていました。

 あ、ついでにお肉とお魚さんも丸焦げにしてしまいました。

 そうしていつからか女の子は、食べる専門になっていたのです。

 だけど女の子はご飯を食べるときだけは、誰よりも幸せそうな顔をしていました。

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