第14話 神様、お願い・・・

「ごめん…私…志伸の忠告…キチンと受け入れてれば…」

「別に良いって」

「…でも…」




そして志伸の家の前に人影があった。



「…志伸…先輩…」

「…華緒理…」

「…志伸…私…帰るよ…じゃあ…」



そう言い帰り始めようとした直後、華緒理ちゃんが走り去った。




「華緒理ちゃん!待って!」

「華緒理っ!」



私は華緒理ちゃんの後を追い、志伸も後を追う。



グイッと華緒理ちゃんの腕を掴み引き止める。




「華緒理ちゃん聞いて!」





私を押し飛ばす。



「きゃっ!待っ…!」



転倒しそうになる背後から私を抱き留められたのと同時に


「大丈夫か?」



ドキッ



「うん…ありがとう」



私は、すぐに体勢を整え、



「華緒理ちゃん!」



華緒理ちゃんの後を追い、引き止めようとした瞬間────





プップーーーっ!


車のクラクションが鳴り響いた。


ビクッ


クラクションに驚き体が強張るのと同時に身動きが出来なかった



「………………」




「華緒理っ!優華っ!」




キキーーーっ!





ドンッ







急ブレーキと共に鈍い音が響き渡る。





「………………」




「…おいっ!…ヤベー」



そういう声が聞こえてきた。



「おいっ!行くぞ!」

「あ、ああ…」



「ま、待って!!」




私は起き上がろうとするも起き上がれない。


私の上に人影が覆い被さっているからだ。



《…誰…?》




すると───



「……ぃ…先輩…志伸先輩っ!」



ドクン…



そういう声が聞こえた。



「…志伸…?…えっ…?」


「いやああああっ!」



パニックになっている華緒理ちゃんの姿。



「華緒理ちゃん!落ち着いて!!」



「大丈夫か?さっき、救急車を手配したから、すぐに来るから」

「…はい…すみません…ありがとう…ございます」





人 は 何 故




誰 か を 守 る 時





自分を犠牲にするのだろう?





ねえ……





……神様





私の命を



引き換えてでも良いから





志伸を助けて……




お願い……










病院から幼なじみの2人に連絡した。


2人は駆けつけてくれた。




「…私のせいだ…私が…」


「華緒理ちゃんは悪くないよ!私が志伸といたばっかりに…だから責めないで」


「…先輩…」


「華緒理ちゃんに嫌な思いさせてごめんね…」





そして─────




「ご家族の方は?」


「すみません。彼の家は共働きなので…俺達、家族と変わらない長い付き合いで幼なじみなんですけど、詳しい事を話してほしいとは言いません。容体だけでも軽く話して頂けないでしょうか…?」



「………………」



「お願いします!」




将斗は頭を下げた。


私達も頭を下げた。



「命に別状はありません。ただ、脳に異常が見られたので精密検査が必要になるかと思います」


「えっ!?」


「現段階では、まだハッキリとは言えないのですが…」


「そうですか…ありがとうございます」



先生は去って行く。





「…ごめんなさい…私…」



華緒理ちゃんが言ってきた。




「華緒理ちゃん、大丈夫だよ。気にしないで」



華緒理ちゃんは頭を下げる。



「それじゃ、親が迎えに来たから帰ります」



そう言うと再び、頭を下げて帰って行った。






私は椅子に腰をおろす。




「優華、大丈夫か?」

「優華」

「…うん…大丈夫…ごめんね…」

「気にすんな!」

「命に別状なかったんだし」

「…うん…」





立て続けに色々起こり過ぎて


頭が追い付かない


今日の私は


きっと 疫病神だ………




私達は病室に行く。


私は志伸の手を握る。




「…志伸…ごめんね…。それから…ありがとう助けてくれて。早く目を覚まして…華緒理ちゃん…待ってるから早く元気になってね…」




そして手が動く。




「………!!」


「…あれ…?…俺…」

「志伸?」



私達は声を掛けながらもナースコールを押す。



「あの…あなた達は…?」

「えっ?」


「志伸…?」と、智香と私。


「志伸…?は?ちょっと!待てっ!目を覚ました瞬間、変な冗談よせよな!」


「えっ?…いや…」



「…志伸…本当に…分からない…の…?」と、私。


「あの…さっきから志伸、志伸って…俺…志伸って言うんですか?」




「………………」



その時だ。



「どうされましたか?」



看護婦さんが来た。



「すみません…目を覚ましたのは良いんですけど…」

「…記憶が…」


「分かりました。先生に、お伝えしておきます」

「お願いします」



そして


「…記憶…」

「…喪失…」




他人行儀なのも


分かる気がした。


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