第13話 不幸

彼・友士と付き合って1ヶ月。


彼の家に行った時の事だった。




キスをされ深いキスをされ、洋服が脱がされるのが分かった。



《ちょ、ちょっと待って…》

《わ、分かってるけど心の準備が…》




私は何とか押し退ける。




「ちょ、ちょっと待って!」

「何?」

「こ、心の準備が…」

「準備いる?好きな人と1つになるのに?」

「い、いる!わ、私、初めてだし」

「そう?大丈夫!優しくするから」



「いや…優しくするとかしないとか…の問題よりも心の準備…」

「俺の事、好きなんだろう?」

「そ、そうだけど…」

「だったら良いじゃん!」



首筋に唇が這う中、徐々に肌が露になる。


唇は下へ下へと這う中、下半身に手が伸びる。




「や、ちょ、ちょっと待って!やっぱり無理!」


「は?なあ!俺の事、好きなんだろう?だったらHくらい出来るだろう?」


「Hくらいって…簡単…っ!」



キスで唇が強引に塞がれ更に深いキスをされる。


容赦ない荒々しさのやり方に、逆に恐くなった。


下半身に手が伸び触れられた瞬間




「や、やだ!辞めてっ!」



「…はあ?意味分かんね!お前マジ俺の事好きなわけ?」

「す、好きだよ!好きだけど…」




「………………」




「…もう良いや!面倒くさ!帰って!」

「…えっ…?」

「相思相愛でHさせない彼女って…どうなの?」

「…友士…」

「今日限りでお別れな」



そう言うと私を追い返すように部屋から出した。



「ちょ、ちょっと!友士っ!」



バタン




すると部屋から誰かと電話で話す声がした。


他の女の子だろうか?


私は渋々帰る事にした。



途中雨が降りだす。


雨の中トボトボ帰る





「…志伸…」



ポツリと呟くと携帯を出しては画面上には、志伸の連絡先。



「デート…中…だよ…ね…?」



その時だ。



「優華」




ビクッ


名前を呼ばれ振り返る視線の先には




「…将…斗…」

「…お前…すっげー濡れて…」


「…彼氏に…フラれた帰り…志伸の忠告あったけど…相思相愛だったから…自分の気持ちを押し殺してまで諦めたくなかったから…傷付いても良いと思って…」


「…優華…」

「本当…馬鹿だよね…忠告受けてたら…こんな事には…」



頭をポンとされた。




「想いは止められないから仕方ない…綺紗羅 友士は…女扱い上手いから…同性の俺も嫌いだったよ。とにかく風邪引くから家に来な」


「…大丈夫…帰るから…」

「何かあったら傍にいてやって!」

「…えっ…?」

「…アイツ…志伸が言ってた。アイツに任せられた」



「………………」




「アイツ心配するだろうから家に来な」




私は将斗の家に移動する事にした。


その途中、志伸は私達を見掛けた。




「…優華…と…将斗…」



《優華…デートって言ってたからな…》




「志伸先輩」

「えっ?あ…悪い。行こうか」

「はい」



「………………」




その後の俺は何処か上の空状態


彼女とデート中なのに


これじゃ駄目だと思ってはいたものの




「…先輩…どうかしました?」

「…えっ…?」


「急にボンヤリする事、増えた気がするのは気のせいじゃないですよね?」



彼女は気付いていた。




「…悪い。せっかくのデートなのに…」

「本当ですよ。…ねえ…先輩」




彼女は俺にキスをした、



「…華緖理…」

「…私…不安なんです…」

「…えっ…?」


「幼なじみいるし、いつか、そっちの方に行くんじゃないかって…私…いつも、いつも、不安で仕方がないんです!」



「…華緖理…」



「私だけ見て下さい!私だけ愛して下さい!恋人同士になってから不安ばかりで正直、片想いの時が良かった様な気がしてなりませんっ!」


「…それって…俺の事…信じられないって事?」

「…そんなつもりは…」


「幼なじみは幼なじみでしかない。もう俺達は別々の道を歩んでいるから。俺は華緖理だけを見てる」


「…ごめんなさい…先輩……気持ちは凄く嬉しいんですけど…素直に喜べません…今日は失礼します…」


「えっ…?」


「今日は…ここでデートは打ち切りましょう…」

「…そうか…分かった…」



俺達は別れた。


俺は迷う事なく、将斗に連絡した。





♪♪♪~…


『アイツに何かあった?』




「…志伸…?」





♪♪~…


『彼氏と何かあったらしいけど』

『どうして?』




♪♪♪~…


『街で、お前らが一緒にいる所、見掛けた』



♪♪~…


『そうか。ゲーセンにいる時、雨に濡れて歩いている優華見掛けて声掛けた』





♪♪♪~…


『そうか』



♪♪~…


『お前、彼女とデートだったんじゃ?』



♪♪♪~…


『そうだったけど、お前ら見掛けて、それ所じゃなくて…』

『彼女にデート打ち切りされて帰って来た所だよ』




♪♪~…


『打ち切りって…』

『優華の事、話したのか?』



♪♪♪~…


『まさか!』

『だけど彼女に言われたよ』

『幼なじみがいるから、そっちに行くんじゃないかって不安だって』

『片想いの方が良かったって…』



♪♪~…


『なあ、お前、今から家に来いよ』



♪♪♪~…


『どうして?』



♪♪~…


『俺よりもお前が良いだろ?』

『お前に任されたけど俺の役目じゃない』



♪♪♪~…


『優華が良い気しないから行くわけにはいかねーよ』




♪♪~…


『彼女がいるから?』



♪♪♪~…


『そう言う事』



♪♪~…


『そうか…分かったよ』







「…将斗…帰るね…」

「えっ?」

「ありがとう」

「要約温まった所なのに?ゆっくりしていけば?」

「…そうなんだけど…」

「…アイツじゃなきゃ駄目?」

「…えっ…?」

「志伸」




ドキッ


図星だったのか自分でも驚く程、私の胸が大きく跳ねた。




「や、やだなー。そんなわけないじゃん!」


「俺じゃ役不足っしょ?アイツに連絡したら?アイツ彼女とのデート打ち切りされたらしいよ」


「えっ?う、打ち切り?」

「そっ!つー事で迎えに来てもらいな」

「…えっ!?い、良いっ!だ、大丈夫!」




と言う私の視界に入って来たのは




「なあっ!お前、今から来いよ!」



携帯片手に誰かと話している将斗の姿だ。

だけど、大体の予想はつく。




「えっ…?ちょ、ちょっと!将斗っ!?」



グイッと肩を抱き寄せられた。




「きゃあっ!」


「やっぱ志伸が良いんだってさ!つー事で、今から来いよ!良いなっ!」



「今からって…」


電話口からの志伸の声が聞こえる。




「良いから来いっ!でないとどうなるか分かるよな?」

「はあっ!?マジ言ってんのか!?」

「マジだ!絶対来ねーと許さねーからなっ!」



「志、志伸っ!大丈夫!もう家に帰るから」


私は大声で伝えた。




「志伸、お前が来るまで優華は帰さないから。傷心の優華迎えに来ないと…」



グイッと私の腕を掴む。



「きゃあっ!」



ドサッ


ベッドに乗せ、両手を押さえつけられた。


ドキッ


「ちょ、ちょっと!将…」




ピッと携帯を切った。



「や、やだっ!」



スッと離れグイッと引っぱり起こされる。



《えっ?》



「しないって!アイツがどうなるか…これで来ないのは有り得なくね?アイツ、絶対来るはず!優華、ベッドに隠れてな」


「う、うん…」





すると─────




ドタドタ…


かなり慌てて部屋に向かって来てるのが分かった。




「将斗っ!!てめぇっ!優華に…」



バッと布団を剥ぎ取られた。




ビクッ



「…えっ…?…優…華…?」

「ど、どうも…」

「アイツは?将斗は?」



背後から志伸をヘッドロックする将斗の姿。




「うわっ!」


「よー、志伸。優華が襲われたと思ったか?安心しろ!手は出してないから」


「いや…別に…」


「嘘ばっか!焦って飛び出して来たんだろう?デート中、俺達を見掛けてデート所じゃなくて、彼女にデート打ち切りされて」


「なっ!そ、それを言うな!」

「打ち切りって…見掛けたからって…私の事は良かったのに…」

「彼女とのデートに集中しなよ!」

「し、仕方ねーだろ!?お前ら見掛けたんじゃ…」



「………………」




私の手を掴む将斗。



トンッ


背中を押し、志伸に押し渡す。




「お前らって面白いよな?」



「「えっ?」」



私達、同時の声。




「昔からそうだよな?言い合って喧嘩して。でも何処かお互いの存在を必要としてて違う意味で惹かれ合ってて…まるで磁石みたいだよな?」



「…磁石って…何だそれ! + と- しかねーじゃん!」

「しかもくっついてどうすんの?恋人同士じゃないのに?」



「2人で1つってやつだよ!恋人同士じゃなくても友情って意味もあり幼なじみっつー絆があるだろ?」


「- と - 。+ と + 。同じ極じゃ反発してくっつかない。それが喧嘩してるお前ら。+ と - だと、くっついて同じ極じゃないからこそ、良い点も悪い点も、相手のあるもの、ないもの吸収し合ってカバーし合って、バランスが取れてる」


「俺が+なら」

「私が-」

「その逆パターンもあるって事だよな?」



「つー事で分かったなら帰ってくれ!」

「えっ?」

「俺の部屋だから」

「あ、ああ…」




私達は渋々帰る。




──── そう ────



これが後に


大変な事になるなんて


知るよしもなく──────

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