第12話 2人の関係

それから数ヶ月が過ぎたある日の頃、デートの別れ際───




「…先輩…あの…」

「ん?どうしたの?」

「…今日は…帰りたくありません…」



彼女・華緒理ちゃんが言ってきた。




「えっ?…いや…でも…ほら…男と女だし…」

「男と女…恋人同士なのに…」

「…華緒理ちゃん…」



彼女の目は真剣だった。



「…華緒理ちゃん…それって…覚悟してるって事?」

「…それは…」


「俺も一人の男だし恋人同士なら尚更だよ。俺、華緒理ちゃんの事は好きだし、もし家に来るなら良いよ。一人の男と女としてなるつもりなら連れて行くけど…」


「はい…」


「そうか…分かった。家に行くからって必ずしも、そうなるとは限らないけど…ブレーキ…掛からなかったら…分かるよね…?」




そして────



「今ならまだ間に合うけど」

「大丈夫です…お願いします」

「…そう…?」



その後、2人は仲を育んでいくのだった。




そんな私は相変わらずで好きな人出来ては告白したり、相手側から告白されたりの日々。





ある日の事─────




「あの…私と付き合って下さい!」

「えっ?あ、はいっ!是非!」

「えっ!?」

「俺も気になってたから」




《えっ!?夢じゃないよね?》

《本当に…!?》

《ま、ま、まさかの!相思相愛!?》




私、深沢優華。


超好きになった彼・綺紗羅 友士(きさらゆうし)君。


アピって愛の告白をしました!


恋が実りました!


そんな私はハッピーです♪




「あ、あの…本当に本当…ですか?」

「本当に本当」




私は彼と付き合う事にした。




♪♪~…


『志伸、志伸、!聞いて!聞いて!』



♪♪♪~…


『やだ!』



♪♪~…


『早っ!そうか…いいよ、いいよ!分かりました!言いませんっ!彼女の事で、いっぱいだもんね~』



♪♪♪~…


『怒った?』



♪♪~…


『別に』




♪♪♪~…


『嘘ばっか!で?』

『話聞くから言いな』



♪♪~…


『結構です!』



♪♪♪~…


『怒んなよ!子供(ガキ)!』




♪♪~…


『どうせガキですよーーっ!彼女みたいに可愛くないしー!純じゃないしさー!良いよ!気にしないで!じゃあ!また!』




「…アイツ…マジ怒ってんのか?」




私はベッドに横になる。







どうしてだろう…?


一番に報告したくて


連絡したくて


仕方がない



何かあった時も


必ず些細な事でも


ついメールとか


電話(ダイヤル)してみたりして



私にとって


友達以上恋人未満?




それとも


幼なじみ以上恋人未満?




不思議な気持ちの私がいる






「悪い!ちょっと出掛けて来る!」

「あっ!こらっ!迷惑…」

「優華ん家だから!」

「優華ちゃん家って…幼なじみでも…」

「まあいいんじゃないか?青春!青春!」

「もうっ!あなたったら!」




そして─────




♪♪~…


『なあなあ、空見てろよ。今日は綺麗な満月が出てる!』




「志伸じゃん!」




♪♪♪~…


『いーやー』



♪♪~…


『良いから見ろって!』




「面倒くさ…見れば良いんでしょう?見れば!」



私は窓際に向かい開ける。




「満月出てないじゃん!何処に出てるわけ?」

「今日は出てねーし。半月ってやつ?」



ドキッ



「えっ!?…なっ!」



「………………」


「何故…いる…」


道路には、幼なじみのアイツがいた。



「よー!」

「よー!じゃないから!何しにきたわけ!?」

「お前に会いに来た!」




ドキッ



「はあぁぁっ!?お呼ではないからっ!」

「てめー、マジ!ガキみてーにフクれてんじゃねーぞ!」

「うっさいな!ご近所迷惑です!帰って!ばいばーーい」




窓を閉め、カーテンも閉める。



「あの女…」



ピンポーン


インターホンが鳴り響く。



「来た!」



そして階段を駆け上がる音が近付いて来るのが分かった。



「来る!」



私はドアを押さえた。




ドンドンドン



「何しに来たのさ!帰って!彼女とラブラブしてれば良いじゃんかっ!」


「それは後からでも出来んだよ!」


「後から!?はあっ!?私の方が優先とか有り得ない!彼女が普通先でしょ!?優先順位違うから!」


「お前が、すぐに聞いて欲しい言い方だったから来たんだよ!ここ開けろ!」


「嫌です!帰って!」




「どうでも良くて、些細な事でも話を聞き合うのが俺達だろ!?」




「………………」



「…い、良いってば!帰ってよ!私に構わなくて良いからっ!」




「………………」



「優華っ!!てめぇー、いい加減にしろよ!そっちが意地でも開けねーっつーなら、こっちからドアブチ壊して行くからなっ!」


「はあっ!?壊したら弁償代頂くからねっ!」

「上等じゃねーか!」

「…えっ…?」

「行くぞ!」




私はドアを開ける事にした。



「うわっ!バカッ…危…!」

「きゃあっ!」




ドサッ


私達は縺れ合うように倒れた。



「…ったぁ~…」

「…ってぇ~…」



ドキーーッ


視線がぶつかった。




私達は慌てて離れ背を向け合う。




「…で?話って?」

「べ、別に大した事じゃないし…」



私達は背を向けたまま話をする。



「大した事じゃなくても連絡するって事は話を聞いて欲しいからだろう?些細な事でも連絡する約束だから。せっかく来たんだから話しな」




「……大好きな人と…付き合う事になったの…」

「そうか…良かったじゃん!」

「うん。相思相愛だったみたいで、綺紗羅 友士君って言って…」

「…綺紗羅…友…士?…って…おいっ!」




私の肩を掴み振り返らせる。




「な、何?そんな恐い顔して…」

「付き合うな!って…言いたい所だけど…」

「えっ?」

「そいつは辞めた方が良い」

「…そんなの…無理だよ!…だって…相思相愛なんだよ…」


「分かるけど!相思相愛だし、勿論、応援してーけど…」

「…志伸…?」

「そいつは…そいつだけは辞めて欲しい…」

「何で?」


「…そいつは、モテることを良い事に女遊び激しくて告白してくる奴とは手当たり次第付き合うらしい。だから…お前が遊ばれるの目に見えてるんだよ…」


「…嘘…でしょう?第一、志伸が、どうして、そういう事知ってるの?」


「…将斗からの情報だ…アイツ小・中と、一緒で知ってるらしくて…」


「…そっか…でも…今回ばかりは…志伸でも言う事は聞けないよ…傷ついても良い…相思相愛になれたのにチャンスは逃したくないから……」




グイッ


抱き寄せられた。



ドキン




「…分かった…何かあった時は言いな…」

「…うん…」



抱き寄せた体を離す志伸。



「じゃあ、俺、帰るよ」

「…うん…」




志伸は帰って行く。



「志伸っ!忠告…ありがとう…」

「…ああ…」



私達は別れた。






当たり前のように交わされた会話


『何かあったら……』




だけど─────




私達は 既に別々の道を歩み始めていた


何かあった時


私の隣に 傍にいるのは誰……?










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