第15話 絆

私達3人は毎日、顔を出した。


記憶喪失という志伸の為に、私達はとにかく少しでも思い出してほしくて────


そんな中、華緒理ちゃんは自分に責任を感じているのか行こうともせず来る事もなかった。


何度、彼女を誘っただろう…?





ある日の事────。




「いい加減にして下さい!」

「…華緒理ちゃん…」

「先輩さえ居れば良いと思いますよ。私は絶対に行きません!」


「華緒理ちゃん!アイツが…志伸が…好きなんでしょう?告白して付き合ってきたのに、どうして?」


「…自信ありませんよ…!…幼なじみ以上の絆にはなれません…私じゃ役不足です…!…私…不安だったんです…」



「…えっ…?」


「付き合う事が出来てから逆に不安ばかり。私…優華先輩の事…正直気掛かりだったんです。相談相手で何でも話せる。…幼なじみという絆には敵いません」


「でも!好きだったから告白したんでしょう?好きならアイツの事を信じてあげて!彼女ならあなたの記憶を刻ませてあげて!アイツは!志伸はあんたを守ったんだよ!」



「………………」



「好きな女(ひと)だから守ったんだよ!自分を犠牲にして迄あなたを守った!それを分かってあげて!まだあんたの記憶戻ってないの!だからお願い…華緒理ちゃん」



「…すみません…失礼します…」



そう言うと去った。




◯ 病室


「志伸にね、華緒理ちゃんって彼女がいるんだよ。超可愛くて、すっごい2人はラブラブで」


「彼女…ですか…?…そうなんですね。君は?」

「えっ?」

「本当に幼なじみなだけですか?」

「うん。私は彼氏いたし。前に話し…」




スッと私の片頬に触れる志伸。




ドキン



「…でも…何処か引っ掛かるんですよね…いつも一緒にいた気がして…」


「それは幼なじみだからだよ。クラスも一緒だし、クラス委員もしてるからじゃないかな?」



《志伸…早く記憶戻ってよ…》

《調子狂うよ…》



「…そう…なのかな…?」



頬から手が離れる。




「そうだよ…ねえ、志伸。幼なじみの絆と恋愛の絆って、どっちの絆が深いと思う?」


「…絆に浅い深いもありますか?」


「えっ!?」




「確かに絆は永遠かもしれないけど深いも浅いもないと思いますよ。でも、どちらかと言うなら…幼なじみかもしれません。恋愛は出会いと別れの繰り返しだし」


「…そうだよね…あっ!それじゃ帰るね…また」

「はい。いつも、すみません。ありがとうございます」




私は病室を後に帰るのだった。






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