第3話 Igaina 転入生

「なあ、お前、高校行くの?」と、将斗。

「高校?どうかな?みんな行ってんだよな?」

「ああ。高校は出ておいた方が良いって言うし」

「だよなー」



私達は色々話をしていた。





そして─────



「えー、転入生を紹介する。久稜志伸君だ」




《久稜…志伸…同姓同名もいるもんだな~》




私のクラスに転入生。


私は見る気もなく名前は気になったものの、窓の外をぼんやりと眺めそこまで深く考えずにいた。





「久稜志伸です。宜しくお願いします」


「カッコイイ~♪」

「イケメンじゃん!」




クラスの女子の囁く声が聞こえる中、クラスがざわつく



「ねえ、優華、見てみなよ!イケてるよ彼」



友達の多仁阪 保志子(たにさか ほしこ)が話しかけてくる。





「良い!興味な…ぃ…」




グイッ



私が言い終える前に頭を教壇に向かせる。




「……!!!」


「ねっ!イケメンでしょう?」

「…それは…」




まさか私の前に現れたのは意外な転入生。


幼なじみのアイツ。


間違いなく久稜志伸の姿だった。




《なんで??》




その時だ!



「あれ~?優華じゃん!」




私の名前を呼ぶ志伸。


一気に私に視線が集中し、更にざわつく。



「何?知り合い?」

「優華、知り合い?」


クラス女子生徒達が言ってきた。



「え?え?どういう事?」



保志子も聞いてくる。





私の席の方に歩み寄る志伸。



「深沢、知り合いなのか?」と、先生も尋ねた。



「…知り合い以前の問題で…幼なじみ…なんです…」

「そう!幼なじみなんです!」





《運命のイタズラだ…しかも…性格…キャラ変してるよね…?》



「そうかー、じゃあ心強いな。深沢、ついでに校内案内も頼んだぞ!」


「…えっ!?校内…案内…?」


「だって~!つー事で深沢優華さん、お願い出来ますか?宜しくお願いします♪」


「…面倒くさ…」




私はボソッと言った。


ベシッとオデコを叩かれた。




「…いったぁっ!」

「どうした?」と、先生が尋ねた。


「いいえ、何でもありません。すみません。幼なじみのオデコに虫が止まっていたので退治してあげただけです♪」



志伸が言った。




《ムカつく!明らかにコイツ叩いたしっ!》



「そうか」



《先生も納得するなっつーの!》



「まあ、とにかくみんな仲良くしてくれ。久稜の席は、そこの空いてる席だ」



先生は、空いてる席に行くように促し、志伸は移動する。




そして、その日、質問攻めの志伸を連れ出す時間もなく、放課後、校内案内をする事にした。




「悪ーぃな。せっかくの貴重な放課後」


「別に。初日だから仕方ないよ。つーか、明らかに性格キャラ変してるよね?」


「やっぱバレてた?」

「分かるし!」

「つーか、ありのままの俺ってなんか鼻につく感じじゃね?」

「私は別に…幼なじみだし」




そう!


私の知ってる志伸はクールで、でも優しくて……


幼なじみだからこそ容赦ない突っ込みはするし……




でも───




キャラ変の志伸は


チャラっぽい感じで……


だけど


ムードメーカーのような……


みんなに好感触を与えていた





「やっぱ第一印象って大事だし!」

「…それは…そうだろうけど…でもさ…疲れない?」

「だから、その為の幼なじみだろ?」

「えっ?」

「幼なじみは、ありのままの自分でいられるわけじゃん?」



「………………」



「幼なじみいなかったら…俺は…ありのままで過ごしてる」

「…志伸…」

「でも、まさかお前がいるなんて思わなかったけど」

「…あー…つーか、それに関して一言言いたい!」

「何だよ」

「私を弄ったり、意地悪するのは辞めて!」


「ええ〰️〰️っ!!せっかくの楽しみをお前は奪うのか?」


「楽しみって…あのねーーっ!私はあんたのオモチャじゃないからっ!」


「つーかさ、ここ、美人系とか可愛い系揃ってるって話、本当だったんだな」


「は?何?あんた女あさりにでもき来たわけ?」


「まさか!…それよりも…お前…良く合格したな?」


「…わ、悪かったな!えー、どうせ私はあんたみたいにイケてないですっ!!」


「俺は別に自分がイケてるとは思っていないけど?」


「どうだか…つーか、顔で入学が決まるとかないから」


「それもそうだよな。そんな事で決まったら世の中不公平だし、良い気しねーよな?」


「そうだよ!」




その時だ。



「なあなあ、ちょっと見てみろよ」

「何?」



グイッと私の顔を動かす志伸。




「……!!!!!」



「ええ…っ!」



叫ぼうとするも口を手で塞がれた。




「しっ!」



私は何度も頷くも男女のカップルと思われる2人の濃厚過ぎるキスに目が離せない。




《ここ…学校なんだけど……!?》

《場所考えろっつーの!》



「すげーな!海外じゃ日常茶飯事だったけど、日本で見るなんて思わなかったし!つーか、余程、我慢出来なかったんだろうな?あれは流れで成り行きでヤっちゃうな!」



私は志伸の手を退かし、



「はあぁぁ…っむぐ…っ!」




再び口を手で塞がれ、足早にそこから去るように廊下の曲がり角の方へと連れ込み、すぐ側の教室に入り身を隠した。




「ムード壊す気か?」




私は志伸の手を退かす。



「ここは学校だし!キ、キ、キスはまだしも、ヤ、ヤるとかって…」


「まあ、俺は、きちんと場所考えるけど」

「それが普通だし!当たり前だってば!」

「でも我慢出来なかったら…」

「Hしちゃうわけっ!?」


「バカ!声でけーよ!」


「そんな事知った事じゃないし!つーか、それって好きな人じゃなくても、Hするって事っ!?」


「いや…俺は、そういうのしねーから!我慢するし!」

「…我慢って…」

「何?お前Hして欲しいの?求められたら好きでもなくヤっちゃうタイプ?」


「いや…いやいやいや…場所によっては私も我慢する。つーか!そんな事知らないよ!したことも、なった事もないし!つーか、求められたらとかしようと思わないし!」


「中学の時、付き合った男(やつ)1人や2人いたんだろ?」


「…そんなの…ないよ…良い恋愛なんて…してないし…最悪な恋愛ばっかだよ…」


「…えっ?」


「上手くいきそうな気がして告ったら断られ、告白してOKかと思ったら全然本気じゃなくて可愛かったからって…そんな理由…」


「…優華…」



「正直、志伸に傍にいて欲しい時、何度あったか……ごめん…今更、愚痴っても仕方がないけどね…さて!移動しようか?暗くなっちゃうよ」




私は教室を出始める。




グイッと引き止められた。



ドキッ



するとフワリと背後から抱きしめられ、私は更に胸が大きく跳ねた。





「…志…の…ぶ…?」


「じゃあ今度からは、何かあった時、俺が傍にいてやるよ。お前の傍にずっと居るから…泣きたい時、淋しい時、些細な事でも良いから俺を呼び出しな」


「…志伸…」

「飛んで来て話聞いてやるから」

「…飛んで…鳥にでも運んで貰うの?」


「えっ?いや…いやいや…漫画の世界じゃねーから!つーかマジボケ!?」


「まさかっ!」






そんな訳がない


『飛んで来てやる』


その言葉は凄く嬉しかった



だけど


そう言える志伸が


幼なじみとしてだとしても


1人の男として成長してる


そんな気がした……




いつも冗談言って


馬鹿にして


からかってる志伸とは


打って変わって


違う1面を


垣間見た気がした



✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕✕



~ shinobu side~



優華の過去


俺がいない間


彼女は色々あったのだろう…


追求はしない



実際ここの高校に来たのは


彼女・優華がいたからもある


将斗に聞いて聞き出したのだ



好きとか


そういう想いよりも


ただ俺は


彼女・優華の傍にいたいと思ったから────














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