第20話 星が落下する

 俺様は大きく深呼吸をした。

 星はテネトス国に落下してくるのではなく、なんとラルガルシア王国に落下中であった。


 英雄ガンドンはけらけらと笑っている。

 どうやら俺様が絶望に浸っていると思ったようだ。

 しかし俺様の眼から輝きは失われる事はないだろう。


 テレフォンブックを発動すると、俺様は問答無用である項目を購入した。

 それはミサイルと呼ばれる兵器であった。


 異世界ではこのミサイルで撃ち合いをして殺し合いをするようだ。

 それもレベル最大のにしたから、とんでもない威力を秘めているだろう。


「なんだそれは、棒のようなものを召喚しおって、びびらせるではないか」


 右手に炎魔法を発動させると。炎の欠片をミサイルに触れさせた。

 火が点火するとミサイルは高速で地面から撃ち放たれた。

 操作設定は説明書があったので熟読してある。

 この戦いが始まる前に色々なアイテムの説明書を読んだのだから。


 ターゲットモードになっているミサイルはそのままラルガルシア王国へ落下中の隕石に衝突した。


 盛大な爆発音と衝撃は地上にいる俺様達にも響いてきた。


「な、んだと、あれで破壊したのか」

「そうさ」


「ふ、ふははははははは、英雄ガンドンも舐められたものだ。これならどうだ? 戦略家とはな、失敗した先も考えるんだよ」


「あ、そうなんだ。俺様は成功した先を考えるんだぜぃ」」


「ミサイル購入、ミサイル購入、ミサイル購入、ミサイル購入、もう購入しまくってねえええええ」


「ってえ、まじかよおおおおおお」


 英雄ガンドンの悲鳴が轟いた。

 空から数えきれない程の星が落下を辿る。

 1個でも地上に落ちれば自然環境が破壊され、死の星となるだろう。

 もはやラルガルシア王国だけに落下しても周りの国の被害は変わらないのだ。


「おめーらバカだろ、何が英雄だ。あの星1個落ちたら、この大陸終わるぞ」

「何を根拠にいっておるんだ、ばかたれが」


「てめーがバカだよ、ちゃんと歴史書を見るんだな、トカゲ人間の時代に隕石落ちて滅びてるだろうが」


「あ、あれは落ちどころが悪く」

「ならラルガルシア王国は安全ってか? それこそバカげた話じゃねーかよ」


「もにょもにょもにょ」


 英雄ガンドンは自信を失ったかのように口をすぼめてしまった。


「ま全部打ち落とすだけだけどねぇ」



 俺様のミサイルはこの大陸の空に花びらを開かせてくれた。

 大勢の人達が星空に浮かぶ、爆発という花びらを見ていたのだから。


 その日は宇宙の花の日なんていいんじゃねーか?

 俺様は心の中で呟いた。


 戦意喪失した英雄ガンドンは地面に手をついている。

 俺様は辺りを見回す。

 結構暴れたから、ぼろぼろになっている箇所や粉砕されている場所がある。

 俺様は大きくため息をついた。


 すると大勢の民衆がこちらへ走ってくる。

 1人また1人と増え続けている。

 彼らはこちらを見て歓声を上げている。

 何を言っているのかは沢山いすぎて分からない。

 でも彼らは褒めてくれている。

 そんな気がした。


「まったく、めちゃくちゃな奴らだったわね、結局魔族のババアはいなかったわね」

「それもそうだな、邪魔ものもいなくなったことだし、食料配給を始めようか」

「それがいいわね」

「そこの兵士君、あそこで意気消沈している貴族を城の地下牢にぶちこんでくれ、油断するなよ」


「はい、もちろんであります」


 とてとてと兵士が走り出す。 

 その周りに2人がやってきて、総勢3人が意気消沈している英雄ガンドンを連行していった。


 その後俺様とナナニアは一生懸命食料とドバドバンデーを配給し続けた。


================

テネトス国玉座にて

================


 テネトス国の王様の名前はリフルックと呼んだ。

 俺様は今に至ってようやくその名前を思い出したのだ。

 現在ピエロ・トッド・ニーアスからレイガス・トッド・ニーアスへと移り変わった俺様がいる。


 俺様は栄養の問題についてドバドバンデーを飲ませたり、空腹でいきなり大量のご飯を食べるのは危険だと思ったので、少しずつのお粥も提供してある。


 そういった内容と貴族派をほぼ壊滅させたという内容を告げた。


 王様は唖然とこちらを見ていた。


「あの英雄の血筋の奴らは」

「はい倒しました」


「あの魔族のババアは」

「はいいなくなってました。それと首謀者の貴族のガンドンを捕らえてあります。地下牢にて、兵士が変な事をしていなければですが」


「そこのもの、ガンドンを引っ立ててくれ」

「御意」


 兵士がとてとてと走り去っていく姿を俺様とナナニアは見送った。

 王様は二十顎をたぷたぷしながら、たゆんたゆんになっている下腹も気になるようだ。


 しばらくすると放心状態になった英雄ガンドンが誘導されてきた。

 その両手と両足には枷が身につけられている。


「して、バビロニア卿よ、お主の貴族派による野望は打ち砕かれたぞ」


 どうやら本名はバビロニア卿と言うらしい。

 彼はぶつぶつと何かを唱えていた。

 

 王様が偉そうにいばっていると、突如として貴族のバビロニア卿に異変が生じた。


 彼の周りに幾多もの魔法陣が展開されたのだ。

 魔法陣から威力のある爆風が周りをぶちのめした。


 兵士達は転がりながら壁に叩きつけられ、王様は玉座に倒れて助かった。

 俺様とナナニアは咄嗟に殺気に見舞われて、右側に俺様が、左側にナナニアが吹き飛ばされた。


 煙の中、そこにある気配そのものが化け物であった。

 しかし、そこにいたのは子供であった。

 5歳児の男の子が立っていた。

 彼はにこにこしながら、優雅に会釈した。


「お初お目にかかれる。魔族リージャンのババアが色々と面倒をかけているようで、ですがそれもこのわたくしの計画の一部なのです。どうかお許し願いたい。バビロニア卿は英雄ガンドンとうまく融合しましたが、失敗作でしたので、移動にかかるコストとして生贄にしました。わたくしこれでもこの惑星の反対側からやってきたのですよ、では、リフルック王よ礎のかなたにさぁ消えなさい」


 どんなに化け物でも、どんなに最強でも、どんなに幼くとも、俺様がピエロである事には変わりない。


 一瞬でピエロに切り替わり、超人的なスピードで走り出した。

 後一歩と言う所で、リフルック王はまるで分解されるように爆発した。


 男の子はただ王様に人差し指で振れただけである。 

 それも俺様のスピードより凌駕して。


「さて、そこの殺人鬼ピエロ君と勇者と魔王の末裔のお嬢さん、あなた達はここで死にますか、それとも命乞いをしますか、どちらもでよろしいのですが」


 いつの間にかナナニアが俺様の隣に立っていた。


「あれ、化け物よ」

「見た目は男の子と言う所が最悪だな」


「見ました? 王様は触れられただけで分解されたわ」

「ああ、見た、あのガキに触れたら終わりだ」


「ならどうしましょう、用心棒として戦ってもいいけど、あたしだけでは役不足よ」

「ふぉふぉふぉ、ならわしが参戦いたそう」


「な」


「え」


 城の壁が吹き飛んだ。

 まるで爆弾を使って爆破したようなものだった。


 右から左に瓦礫が吹き飛び。

 そこに悠然と構える髭もじゃのお爺さん。

 見た目はドワーフそのものだ。


「ふぉふぉ、爆弾ならドワーフにまかせんしゃい、それにしてもまだまだピエロとしての役割不足じゃのう、レイガス、いやピエロか」


「し、師匠、なぜここに」

「お主がラルガルシア王国で商売ごっこをしていたころ、わしはこやつらどドンパチしておったんじゃお、何度死にかけたと思う? 数千回は死にかけたぞい、そんな時弟子として助けにくるならまだしも、そのぴちぴちの女性といちゃいちゃしおってからに」


「いえ、こいつは用心棒です」

「いえ、この人は雇い主です」



「おめーら変なところで意気投合しとるなぁ、そいつは破壊神じゃ」


「何さらっととんでもね―こと言ってんだよ神が地上に来るわけないでしょ、師匠、ボケたのですか」


「先程からくそ爺と話をしているようですが、このわたくし破壊神でして、この惑星を破壊しに来ました」


「ぎゃあああ、まじだったああああ」


「な、わしの言った通りじゃろう、わしすごくね、こ奴ら神々と戦ってたんだぞ」


「いえ、師匠のはバカですから、例外です」


「ふぉふぉ、手厳しいのう、さて、破壊神よ創造神と祝福神がよろしく言っておいたぞ、あの2人にはお仕置きしておいたからのう、次はてめーじゃ」


「あのう、ピエロ? あんたの師匠何者よ」


「師匠は変態でゴッドスレイヤーの異名がある。昔から頭のぶっ飛んだ人だぜ」


「ぶっ飛びすぎかと」


 破壊神は地面に両手を当てた。

 地面が分解され爆発していく。 

 それが津波のように師匠の元へとなだれ込む。

 師匠はめんどくさそうに、右腕で払っただけで、その津波が停止した。


「はぁ、あなたは神々にとって例外のドワーフですよ」

「るせぃ、わしの大事な人は全員神々に殺された。ゴッドスレイヤーになったっていいじゃねーか」


「あの俺様は大事な人じゃないんですか」

「おめーはみみっちい米粒だ」


「意味が分からないのですが」


「さて、次はわしからといこうかのう」


 俺様は絶句して。

 

「ナナニア逃げるぞ、この城吹き飛ぶぞ」

「え、ええええええええ」



 老人の体が光始めた。 

 背中からハンマーを取り出すと。それを思いっきり振り下ろした。


「ビッグバンハンマーああああああああ」


 その日テネトス国の城が崩壊した。

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