第22話
ダンジョンの中、師弟それぞれの矜持と力がぶつかり合う時が来た。
デニスとヨーゼは地面を蹴り、各々の武器を相手にぶつけようとする。
ヨーゼは上段に構えた大剣を迷いなく振り下ろし、デニスは引き絞った矢のような鋭い槍の突きを向けた。
剣先と槍先が正面からぶつかり、雷光のような火花が散る。するとお互いは自分たちの力で跳ね返されたのであった。
「アイスランス!」
ヨーゼは短い演唱から片手をかざす。
ヨーゼのその手から放たれたのは凝集された氷塊の先端だ。
その大きさは人と同じで巨大だ。しかもその氷塊は余波を生じながら空中を走り、デニスの眼前へと迫ったのだ。
「ふんっ!」
デニスはこれを躱(かわ)さず、槍を横に凪って氷塊を弾き飛ばした。
「ボルトショック!」
今度はヨーゼの演唱により、空中に黒い雨雲ができたかと思うと雷鳴が響く。
次の瞬間、デニスに向けて雷が真っすぐ放たれたではないか。
「くっ!」
デニスは雷鳴の予兆に気付き、既にその場所にはいない。
デニスは回避によって身体を横に転がし、跳ねるように立ち上がった。
「ウッドスネイル!」
再びヨーゼが叫ぶと、なんと地面から巨木の根が生え、デニスを襲ったではないか。
「くそっ!」
デニスは根の一撃を伏せて回避する。
そうすると、根は一瞬で腐り灰のように消えた。
「まったく。魔法の才だけは天下一品だな」
ヨーゼは剣や騎士としての才覚よりも、魔法の扱いと魔素の適正に優れていた。
更にヨーゼは5大元素である火属性、水属性、木属性、電気属性、土属性を使えるのだ。
魔法の属性にはこれに太陽属性と月属性が加わるため、正確には全属性を用いられるわけではない。それでもデニスにとって多種多様な魔法の連打が脅威には変わらなかった。
「ソイルハンマー!」
ヨーゼの魔法の連続攻撃はまだ終わらない。
地面から土くれが空中に集まったかと思うと、その土の塊がデニスを覆うように動いたのだ。
「やられっぱなしでたまるか!」
デニスは真上に向けて槍を投げる。
槍は亜音速の速さで天を突き、土くれの天井を破壊した。
「まだまだあああ!」
デニスはサインの力で空中の槍を操る。
槍はデニスの腕力と遠隔操作の力で加速しながらヨーゼの身体を狙った。
「ファイアウォール!」
ヨーゼは咄嗟に演唱すると、槍とヨーゼの間に立ちふさがるように炎が駆け上がる。
しかし、その程度で金属製の槍は止まらない。
槍は勢いを落とさず、そのまま炎の壁を打ち破った。
「取った!」
デニスは命中を確信した。
だが、そうはなっていなかった。わずかに炎でデニスの目線を隠したため、ヨーゼは身を逸らして躱していたのだ。
更にヨーゼはデニスの得物である神器のボーを奪おうとした。
「させるかよ!」
デニスはすぐに槍を手元に引き寄せ、ヨーゼの目論見を回避した。
「今度は俺の番だ」
対するデニスもただ逃げ回っていただけではない。
その周りには無数の剣や盾、それに槍などが宙にあった。
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