第124話 inrumercy

深夜、23時。

東海道線を西に下るサンライズエクスプレスは

今、熱海に停車し

箱根をトンネルで抜ける。



多数の犠牲者を出した難工事、丹那トンネルを

最新鋭のインバータ電車は、静かに走り抜けてしまう。




路盤が多少歪んでいても、空気バネ台車の

弾性は、眠りについた乗客に伝える事もない。




多数の犠牲者、と言うけれど

ひとつの命は貴いもので、それぞれに

家族があってこの世に生を受けた、と

思うと心が痛む。



その時代には、男が周囲を分け隔てなく

見守るのは当然であった。




生き物の本質であり、強い、力を持つ者は

弱い者を守るのは当然である(民法に年少者庇護の条文があるように。)



それが、損得勘定が入ると壊れてしまう。



例えば、ライバル会社と商戦になっても

昭和の時代なら、フェアに行ったものだった。



いつか、仲間になる事もあったし

日本の場合、官僚主導で業界へ行政指導などもあったりしたせいもある。




例えば、家電メーカーのビクターは

経営に困った時、日産自動車や、松下電器の

支援を受けるように通産省が指導したり

した事があったりもした。

外資にも関わらずである。





今は、そういう指導を企業が聞き入れない事も多い。



目先のお金儲けが第一で、投資家達の

意向を気にする、つまりは



日本的な協調性にはなじまなくなってくる。




昔なら、とりあえず

大人の男が、傲慢な態度を取るのは

恥ずかしい事であった。






それが、その場凌ぎの損得で

態度を変えるような恥知らずの男が

増えてしまった。




損得勘定は相場次第だからである。


魂のない男。




それは諸悪の根源である。





例えば、部下を虐めてコストを下げろと

上司が言ったからと言って、戦前の男なら



そんな、恥知らずの事はできないと

拒否するはずである。







損得より、善悪が第一だからである。





今は、そうではないので




子供がイジメをするのは当然である。

損得なら、当然そうなる。





そういう社会で育つと、表面だけで

中身のない人間だけになるから

愛がなくなる。


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