第24話 神の子と呼ばれた少女(4)
美桜が伊織と関わるようになってから、伊織は二回呪われている。
もしかしたら、美桜と関わる前から呪われていたこともあったかもしれないが、命に関わる可能性があったのはこの二回だ。
昨日、初めて伊織に憑いている霊や雑鬼たちを見たときは、単に運悪く取り憑かれているだけだと思っていた美桜。
だが、これが二日連続となると、話は変わってくる。
いくら伊織が呪われやすい体質で、その上霊も取り憑かれやすいとしても、また何かしら原因があるはずだと美桜は考えた。
霊を寄せ付けてしまう何かを伊織が持っているか、もしくは、何かそんな行動をしたとかだ。
「別に何も贈り物はもらってないし、行動と言われてもな……」
学校からの帰りの車内で、美桜に聞かれて何か怪しいものはないか伊織は考えたが、全く見当がつかない。
誕生日はまだまだ先だし、何かの記念日やイベント毎も特にない。
それに伊織宛に贈り物が届いたとしても、最近は何か起きた時の為に念のため美桜が用意した清めの塩をかけてから伊織に渡すようにしている。
「行動って、例えばなんだ?」
「えーと……例えば、何か入っちゃいけない場所に入ったとか、壊しちゃいけないものを壊しちゃったとか、見ちゃいけないものを見たとか……そういう感じの」
「……あのな、俺は昨日も一昨日も学校と家の往復しかしてないぞ? 特に用事もなかったし」
話を聞いていた東堂も伊織の言った通りだと頷いた。
「ええ、確かに坊ちゃんは昨日も一昨日も、学校から帰ってきたあとはずっとお部屋で動画を見ていましたので……どこにもお出かけにはなっていませんし、不審なことは特には……ずいぶん熱心に見ているなーと思ったくらいでして」
「動画……?」
「ば、ばか東堂! その話はするな!」
「どうしてですか? 本当のことなんですから……別になんの問題もないかと」
伊織が焦っている様子だった為、美桜は眉をひそめる。
「それって……もしかして……」
「な、なんだよ……その目は!」
「やっぱり、変態——……」
「変態って……失礼な!! 別に、やらしい動画を見てたわけじゃないぞ!?」
「慌てるのがますます怪しいわ!」
美桜の中で、伊織の評価がどんどん下がる。
学園の王子様から犬、そして変態犬、さらに、ただの変態へ————
「美桜様、坊ちゃんは月島家の人間ですよ? そんな低俗なものを嗜むことはしません。映像なんて見なくても、伊織様が望めば女性でも男性でもいくらでも用意できるのですから」
「いいいくらでも用意!? なななななんて破廉恥なの!?」
「おいこら東堂!! 話をややこしくするな!!!! 余計誤解されるだろうが!!!」
美桜はただでさえ距離が伊織から離れて座っているのに、さらに離れようと車のドアに体を押し付けてドン引きしている。
これ以上離れられないのが辛そうだ。
「……違うから!! 俺が見てたのは、お前の動画だから!!」
「わわわ私の!? ……えっ!? 盗撮!? 盗撮していたの!?」
「違う!! なんでそうなるんだ!! 昔の映像だよ!! お前がテレビに出てた時の!!!」
本当は、なんの動画を見ていたか美桜に話すつもりはなかった伊織。
神の子と呼ばれていた頃を思い出して、美桜がまた嫌な気持ちになってしまうと思ったからだ。
美桜を気遣ってのことだった。
「……私の……映像?」
「ええ、美桜様の子供の頃の映像を見たいと、坊ちゃんがおっしゃったのでテレビ局の方で借りてきたんですよ……」
「そ、そうだ!! だから、決して、俺はそんな低俗な動画なんて見てないからな!!」
誤解を解くために熱くなっている伊織に、美桜は何度もパチパチと瞬きをして、冷静な口調で言う。
「原因、それだわ……」
「は?」
「……私、映像を見た人が不幸になればいいと思って、かけてたの」
「……何を?」
「何って、呪いよ」
伊織は神の子と呼ばれた少女の口から、明かされた真実にゾッとして肝を冷やした。
そして、その時、ちょうど車は月島家へ到着。
車を降りた伊織の表情は真っ青で、いつものように出迎えたメイドたちは何があったのかと首を傾げていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます