第22話 神の子と呼ばれた少女(2)
「坊ちゃん、やはり何か憑いていたんですか?」
「ん? あぁ、そうみたいだ。今回は呪いじゃなくて、取り憑かれてただけみたいだけど……」
伊織は美桜とまだ話がしたかったが、やはり学校では人目もあり美桜に避けられてしまう。
あまりしつこくして、これ以上嫌われてもなぁ……と思いながらついつい近くにいると目で追ってしまう伊織の視線が嫌で、美桜は逃げているのだけど、そのことを本人は自覚していない。
伊織は帰宅してすぐに、昨日と同じく美桜がテレビに出ていた頃の映像を大きなテレビ画面で再生すると、食い入るようにその映像を見ていた。
(可愛いんだよなぁ……今よりずっと日本人形みたいな顔してるけど、なんというか、純粋に子供って感じで————)
神の子と呼ばれていた当時の映像の中で、美桜は今のように男と話す時にどもったり、触られるのを嫌がるような素振りもない。
赤い着物を着て、おかっぱ頭で……幽霊が見えたり、予言をしたりするから奇妙な子供と言えば確かにそうだが、司会者の芸人のボケに笑ったりして、楽しそうだ。
インタビューでは、好きな芸能人を聞かれて普通に当時子供に人気だった男性アイドルを答えている。
行方不明者の発見、何かに取り憑かれた人の除霊や、守護霊と会話するなんて占いのようなこともやっているが、その能力を除けば、4歳の女の子だ。
特に出始めの頃は本当にただの子供。
「なぁ、東堂。お前が集めてきたこの映像、ほとんど出始めの頃だよな?」
「ええ、ほとんど4歳の頃ですね。大体半年くらいの間のものです。テレビに出なくなる前の映像はテレビ局に問い合わせたのですが残っていないようでして————坊ちゃんがお望みでしたら、他のルートから探してみますが」
「そうしてくれ……」
資料では最後のテレビ出演での発言が波紋を呼んだとなっている。
しかし映像が残っていない為、一体何があったのか、伊織にはわからなかった。
(一番最後のものでも、5歳になったばかりの頃だし……それに、少しずつ表情が暗くなっているような気がするんだよな……)
「承知しました。…………それにしても、坊ちゃん、そんなに見続けていてよく飽きませんね。よっぽど美桜様のことがお好きのようで……」
「あぁ、あいつは俺の救世主だからな。それに、他の女たちと俺を見る目が違うし……————」
「……それは男性恐怖症のせいだと思うんですが……」
「……そうかも知れないけど、そこがいいんじゃないか。たまに俺を呆れたような、蔑んだような目をするだろ? ————それがたまらなくイイ」
「そ、そうですか」
実は坊ちゃんってマゾだったのかなーなんて思いながら、東堂は美桜の映像を探しに行った。
伊織は東堂がいなくなってからも、何度も何度も、美桜の映像を繰り返し見る。
そのまま気がついたら朝まで眠ってしまっていた。
そして、翌朝。
「あー……なんだこれ……また肩が重い」
昨日と同じく、起きたら何だか肩が重い。
気分が暗い。
よく晴れた、爽やかな朝だというのに、体も気分も重くて涙が出そうになる。
「おかしいな……昨日美桜に除霊してもらったのに……なんでだ? また何かの呪いか? いや、でも……痛いとか苦しいとかじゃなく————死にたい」
昨日と同じく、必死にいつもの王子様スマイルを作って、なんとか乗り切ろうとする伊織。
だが、登校した途端、プツリと何かが切れたように表情がどんどん暗くなり、取り巻きの女子たちが心配し始める。
いつも学園の中心で、キラキラの王子様スマイルを振り向いていた伊織が、教室の隅っこで体育座りしていた。
「伊織様、いったいどうしたのかしら?」
「あんな隅っこで小さくなって……」
「具合が悪いのかしら?」
「何かブツブツ呟いてない??」
少し遅れて教室に入ってきた美桜は、そんな伊織の姿を見てため息をつきながら言う。
「また一晩で、なんでこんなに……」
眉間にシワを寄せ、嫌そうな顔をしている美桜を見て、ちょっとだけ伊織は元気になるが、またすぐに表情が暗くなる。
そう、また、取り憑いているのだ。
昨日と同じ、ネガティブな幽霊と雑鬼たちが数匹————
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