本質は。

@ungo

 僕は桜が嫌いだ。花の中でも一際目立つし、たくさんの花びらを集めて自分を主張しているようで、腹が立つ。もっと慎ましやかにしていれば可愛げもあるのに。それに春になったらみんなが桜を見て浮き足立つのも、もて囃されて、その上にあぐらをかいているようで、その態度も気に入らない。何を浮き足立っているんだ。人が溢れる並木道なんかゾッとする。そこいらに香りを撒き散らし、「私を感じてほしい」と言わんばかりではないか。連中はなにを騒いでいるのか。咲いているときですらそうなのに、散り際までひらひらと勿体ぶるあの感じはなんなのだろう。そんなものに情緒を感じやがって。側溝に茶色く濁った色の花びらが溜まっているのを見つけたとき、ようやく胸がすっとする。

 桜なんて大嫌いだ。

 春のうららかな日差しを浴び、酒を味わいながら考える。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

本質は。 @ungo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る