最終話 エピローグ

 ――異空間・プライベートルーム――


「良かった」

「みんな、楽しそう」


 ふわふわと浮かびながら外の世界を眺めるオレンジ。

 彼女は映し出されている異世界の光景を指でフリックする。


 見える景色が変わっていく。様子も、時間も。


「次は、誰を選ぼうかな」


 自分に足りないもの。

 今までに、見た事がないようなものを。


「また、会えるんだよね……みん」


 彼は覚えていないだろうけど。

 それでも、こちらは覚えている。


 だから、また会える。

 また、出会えばいい。


 現実世界で得た経験を見せてほしい。


 どんな成長をしたのか。

 どんな表情を見せるのか。


「まさか、あんな願いを言うとは思わなかったな」


 ミサキは思い出す。

 あの時の、みんの願いを。



『次に開催されるゲームに、ぼくを呼んでくれ』

『次もぼくが勝つ』


『そして何度でもミサキに会う』

『勝ち続ければ、ぼくは一生、ミサキと出会えるだろ?』



 基本的に、一度呼んだ人間は勝者だろうと関係なく呼ぶ事はない。

 ミサキにとって得るものが一度で終わるからだ。


 同じ人間から得るものなど、ごく僅かでしかない。

 それだけのために苦痛を与える事はしたくない。


 記憶が無くなるとは言え。

 経験は蓄積される。トラウマだって染みついてしまうのだから。


「でも、願いなら仕方ない」


 ミサキは小さく笑った。

 彼のことは、何度でも呼びたいと思った。


 たとえ願いがなかったとしても。


 彼から得るものは、他と比べてかなり少なかった。

 今回に限っては。だから。


「次こそは、みんの全てを学んでみせるよ」

 


 アラカタミサキの監獄プリズン生活ライフ


 そこでは、

 オレンジ色の人間になりたいわがままな少女が、自由気ままに生きている。

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