第28話 しいかの強さ
「――わたしを、わたしの人格を、殺してほしい」
「……嫌よ。そんなの」
しいかさんは、そして、わたしの頬を、平手打ちした――ぱぁんっ! という音と、ひりひりする痛みが、頬だけでなく全身へ駆け抜けていく。
「私に荷を持たせないで。……サナカ、たとえどんな人格だったところで、それがサナカである限り、同じ失敗をするわ――それが、そうと決まっているようにね」
じゃあ、どうすれば――、
どうすれば、わたしは、納得する結果を、残せるのか――。
「あなたは今、失敗を経験したわ――だったら、その人格のまま、同じステータス状況のまま、強くなればいい。今度は同じ失敗をしないように、すればいい――、人格を変えて、新しい自分を作り出して、今から逃げるのはダメよ。
サナカ、あなたはそのまま、強くならなければいけない――」
言って、しいかさんはわたしの体を自分の背中に乗せて、おんぶをする――わたしはぎゅっと、しいかさんの背中にしがみついた。
「行くわよ、次のスイーツエリアまで。……あと少し、私の背中にいていいから。
そこで、休んでなさい。気が済むまで、私の背中に顔、押し付けていいから」
「……うん」
わたしは、言われた通りに、しいかさんの背中に顔を押しつけて、叫んだ――叫んで、泣いた……疲れて眠ってしまうほどに、わたしは、泣いた、泣き荒れた。
その間、しいかさんはなにも言わず――なにも漏らさず。
ただ淡々と、わたしを運んでくれていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます