第51話 最善のつもりだった

 痛む体に鞭打って帰宅。


 もう何もできなかったので僕は制服姿のまま布団に入った。


 ああ、そういえば帰ったことを誰にも伝えていなかったな。


 けど、指一本動かしたくないからしょうがないか。


 僕は僅かな後悔を抱えながら睡魔に身を任せた。


 翌日。


 僕は学校を休む。


 やはり打撲というのは体にダメージが入っていたらしく、少し動かすだけでも痛い。


 なので休む連絡をしようと学校に連絡をかけたところ、あの学年主任が電話に出てきた。


「お疲れさま。やはり若者といえど一日じゃあ回復は難しいよね。だから大事を取ってもう二、三日休んだら?」


 事も事だからわざわざ電話しなくて良いと。


 けど、外出しているのを見られたら厄介だからずっと家にいるようにねと伝えてきた。


「なんかいやに優しいな」


 何か裏がありそうで正直気味が悪い。


 けれど、学年主任の言葉通り痛みと熱でしばらく動けそうになかったのでその言葉に甘えることにした。


「ただ、ラインはしておこうかな」


 姫神さんと黒城さんと、おまけで及川の三人。


 文章少なくして、しばらく休むとラインして僕は再度布団にもぐった。


 昼休みごろに僕は再び目を覚ます。


 まだ体の痛みはあるものの、だいぶ楽になってきた。


 これだと明日から登校で良いかな。


「ああ、そういえば送ったラインはどうなったっけ?」


 スマホを開いて確認。


 黒城さんは簡潔に『了解』だけの返事。


 及川からは何度か不在着信が入っていた。


 あいつ、学校ではスマホ禁止だぞ。


 見つかって没収されても知らないからな。


 ここまでは予想通り。


 だけど、一番肝心な姫神さんからは何もなかった。


「既読が付いているから読んではいるんだけどね」


 不安になった僕はラインを再度送ってみる。


「さて、まだ寝るか」


 冷蔵庫から適当に食べた僕はまたも布団に入る。


 やれやれ、本当に今日は寝てばかりに一日だな。


 まあ、それでも寝れるのは身体が休息を欲しているのだろう。


「振り返れば最近忙しかったから」


 学校だけでなく、学会活動に加えてAクラスにおける及川の味方を増やすための説得の日々。


 疲れが溜まっていたのだろう。


「明日から学校に行こう」


 今回の暴行事件でAクラス内のパワーバランスは決定的となった。


 殴られたけど、これで姫神さんの願いは叶えられた。


 これで少し早く僕のことを見直してくれたら嬉しいな。


 姫神さんの幸せが僕の幸せだけど、やはり僕を見て欲しいなと思う。





 


 

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