第18話 撃沈
夕日と川原の組み合わせって凄いな。
ずっと同じ場所を見続けていても全然飽きない。
「三人には悪いことをしたな」
告白して振られた僕は喫茶代とゲーム代を置いてその場を去った。
小心者の僕は何もなかったかのようにあの場に戻ることはできない。
「……振られちゃったか」
思い出すだけで涙がにじむ。
こうなることは分かっていたはずなのに悔しくて仕方ない。
どうして姫神さんは及川が好きなんだよ。
僕の方がずっとずっと姫神さんのことを見続けて来たのに。
あんな、姫神さんの好意を気づかないふりをしている及川よりずっとずっと幸せにしてあげられるのに。
「畜生、畜生」
あの後、及川は黒城さんと姫神さんの三人で昼食を食べたりカラオケをしたりしたんだろうね。
どうして僕は午前のあの時に告白してしまったのだろう。
僕は期せずして及川の傍に姫神さんと黒城さんがいる両手に花状態を提供してしまったわけだ。
とんだピエロじゃないか、僕は。
「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」
軽く声に出して唱題し、僕は頭を振る。
及川のことなんて、もうどうでも良い。
もう関わる気もない。
クラスも離れ、姫神さんから振られた以上、及川の存在を消し去っても良い。
「よし、忘れよう。奴の存在を」
パンと両手で頬を叩き、喝を入れる。
及川とは金輪際特別扱いしない、別のクラス人気者の登場人物Aと捉えれば良い。
そう考えれば良いと思ったら気が軽くなってきた。
どうやら僕は及川の影に振り回されていたようだ。
「バイバイ、及川」
僕は手ごろな石を掴み、川へと投げる。
ポチャンっと、気の抜けた音が辺りに響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます