~1期生 ヴェロニカ~

 南方共和国の旅中、クラリスたちはとある国立大学の中へと足を踏み入れる機会を得た。ちょうどその時学園祭が行われており、特別に見学を許されたのである。

 学園祭では多数の音楽系の出し物が行われていた。大多数が共和国の伝統的な音楽・ダンス、或いは北方王国かぶれのオペラなどが殆どであったが、その中に異彩を放つ出し物が一つだけあった。所謂ゴシック・ロリータの衣装を身にまとい、あざといパフォーマンスを加えた上でハードロック・メタルな音楽を奏でるという内容。観客の人気はいまひとつだったが、クラリスの喰いつきはひときわ大きかった。


「おまえのろっくだましい、しかとみとどけた!」


「……随分と、斬新なパフォーマンスですね。痛々しいキャラ付けを押し通せるとは、素晴らしい精神力です。」


 そう声を掛けられた少女――ヴェロニカは不適に笑い応える。そして、ヘッドドレスの下の黒い長髪を靡かせ、意図的に作られたオッドアイを楽し気に揺らす。


「くくくっ。我に目をつけるとは、下賤な人間無勢にしては大したものだ!」


 ヴェロニカは帝国外東方にある未踏破地域の出身で、そこで出会った学友に感化され今のパフォーマンスに行きついたという。衣装・曲調とともにその技巧(シャウトなど)を身に着け、留学先である共和国で布教活動をしていた。

 布教活動という点において、各地でのパフォーマンスを可能とするユニット入りは魅力的なものである。


「我とて貴様らに協力してやらん気持ちも無きにしろ非ずだが……。分かるな?その、我も軍資金が無くては、だな……。」


「ご安心ください。アーキモト商会が全力でバックアップさせて頂きますので。貴女方はパフォーマンスに集中頂ければ問題ございません。」


 強気から一転、忖度を要求するヴェロニカに対して、ヤスシは最大限の対応を約束する。これにより、あっさりとヴェロニカを篭絡し、メンバー入りさせる事に成功した。

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