~1期生 ステラ~
とある小さな教会の礼拝堂。そこで、幼児達の買収に勤しむ少女が一人。修道服のフードに包まれ左右に揺れる長い赤の尾と硝子下の琥珀が聴衆の心へと忍び込む。
「いいです事?次の礼拝のソロ演者には私を推薦するのですよ?」
「はーい!」
そう言いながら、手に持った菓子を相手の目を見ながら手渡す。彼女――ステラは菓子買い出しの金を貰った上で、自ら菓子を作製し、材料との差額を着服していた。
実際には司祭たちに既にばれており、労働(調理)の対価として黙認されている。実のところ、彼女の腕はかなりのものとなっており、幼児達の胃袋を掴む事には成功していた。
「このまま餌付けが進めばやがては得意先に……。或いは永久就職先にも?」
気の長い逆光源氏計画を吐露したところで、対象とは別の幼児(クラリス)の声が響き渡った。
「みみっちぃのです!だが、そのいきやよし!」
「……貴女のような性格を好き好んで支持する奇特な方々もいらっしゃいます。十分な需要が見込めますので、是非我々の取り組みにご参加頂けないでしょうか?」
ほぼけなしているのではないかという疑いのあるクラリスの声と、それをフォローするヤスシの説明。突然の事態にパニックを起こしたステラはそれに抗えず、徐々に引き込まれていく。
「けなされている!?私は今けなされているの!?
……ああ、でもお金も名声も欲しいし!私はどうしたら!」
「なんじのためしたいようになすがよい、のですっ!」
神のお告げにとどめを刺されたステラは抵抗をあきらめ、その言葉にしがたいメンバー入りを決める事となった。
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