~1期生 シャロン~

 マリアがクラリスのスカウトを受けている頃、近くでその様子を覗う影が一つ。蒼いセミロングの髪の合間から除く鋭さをもった瞳には、強い意志を感じさせる。

 彼女の名前はシャロン。マリア同様に王立の学園へと通う同級生である。マリアと異なり音楽一家の生まれである彼女は、ときより自分以上の才能をのぞかせるマリアに羨望と嫉妬の感情を抱いていた。


「なやめるてんさいしょうじょ……、ふどーのにばんてなのですっ!」


「……えっ!な、何で?」


 突然掛けられた声に動揺を隠せずあたふたとするシャロン。ヤスシそこへすかさずスカウトの話を持っていき、商談の如く進める。その研ぎ澄まされたトークに引き込まれ、思わず了承してしまいそうになったところでようやく我に返ったシャロンは拒否を示した。


「い、嫌です!そ、それにまたあの娘の次だなんて……。」


 エリートである事を自覚しながらも努力を続けていたシャロンは、それでも自分を上回るマリアへの劣等感を同時に抱えていた。直前でマリアのスカウトが行われていた事がそれを想起させ、否定の言葉を紡がせていた。


「ばかもの!ひょうかするのはおまえじしんではない!たにんなのだ!

けっちゃくは、にんきとーひょうでつければいいのですっ!」


「……つまり、評価というのは常に他者が行うものなので、今後予定している観客による人気投票でどちらが上かを明らかにすればよい、という事です。」


 クラリスの一喝により闘争心を取り戻したところにヤスシのフォローが入り、活動におけるポイントを説明される。要するに、ユニット結成後に行われるセンター争いである。

 スカウトにのる事でマリアへの劣等感を払拭する機会が得られる、というその煽りにのったシャロンはメンバー入りとなった。

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