~転生後 クラリス⑤~

「あいどるゆにっとをばくたんさせるのです!こんせぷとは”あいにいけるあいどる”、”みんなでつくるものがたり”なのです!」


 共和国との交易、そしてそれとともに展開した銀行業にて更なる発展を遂げたクラリス・アーキモト家の次なるビジネスは、ファンタジーの世界にアイドル興行を行うという事であった。


「しろうとからえらんで、きゃくにそだてさせるのです!」


「……なるほど、貴族たちがそうであるように、庶民もまた芸術をプロデュースしたい、という要求を持っているという事ですね。」


 この時代、王侯貴族がパトロンとなって芸術家たちを養い、育てるのが一般的であった。そういったもの達が行う公演は敷居が高く、庶民では手が届かない。勿論場末の酒場などにも歌を生業にするものたちが出入りしていたが、その活動は限定的であり全体的なレベルは高くはないのが実情であった。


「これもぷらっとふぉーむびじねすのひとつ、なのです!」


「……なるほど。アイドル志望者とそれを育てたい素人プロデューサーとを繋ぐ場を設置するのが我々の役割という事ですね。顧客はその両方である、と。その為には各種イベントや劇場などの準備が必要になりますね。」


「ふぁんこみにてぃ、もわすれてはいけません!」


 アーキモト家は劇場やファンコミュニティをチャネルとして、ライブイベント、コミュニティ運営、握手会、総選挙、ファンとアイドルの交流会などを企画・提供する。その結果、アイドルには成長と次への展開、ファンは「自分が育てた」のだという感覚を得る事が出来る。

 コストとして必要となるのは各種劇場の設置運営費、アイドル発掘・育成費、マネジメント費、広告宣伝費などとなり、物販収入やライブ参加費などをそれに充てる形だ。


「人は具体的にどう集めましょうか?全く知名度のない現状では募集をかけても優秀な人材を獲るのは難しいと思いますが。」


「ぎじゅつよりはやるき、まずはかずをそろえるのです

 へいきんてきはみんなにすかれるかお。たくさんいればへいきんにひきづられてそこあげされるのですよ。ちあ・りーだーこうかというやつなのです。」


「……なるほど。数が多ければ人は認識しきれずに平均的なレベルで認識される。そして一人ひとりもまたそれに補正される、と。最後の『ちあ・りーだー』というのはよく分かりませんが、そういう売り方もある、という事ですね。」


 公募・オーディションに関してはビジネスが軌道に乗った後に行う事とし、栄えある劇場一つ目を交易の要所に建設するとともに、一期生に関してはクラリス自らがスカウトして周る事となった。

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