~転生後 クラリス④~

 オリジナル商品、飲食プロデュースで成功を収めたクラリスの次なる事業は海運、南方共和国との貿易であった。近年南方共和国では大きな技術革新が進んでいた。

 最近開発された魔鉱石を使用した生産技術・冷凍技術・鉄道輸送技により、ほぼ取り立てと同じような鮮度を保った魚などが内地でも流動していた。それ以外にも次々と新たな製品・技術が生み出されており、南方共和国は技術革新の中心地となっていた。こういった新鋭な製品に転生者の影を感じた事が、クラリスの興味をひいた大きな要因である。

 加えて、先のビジネスで更に強化された資金力を活用、大々的に共和国独自の特産品を海路で運ぶ事により、大王国を起点としてアーキモト家だけではなく大王国の発展にも寄与すると考えたのある。


「話には聞いておりましたが、これはすごいですね……。レールを敷いて、鉄の車を走らせるとは。一体どういう仕組みなのでしょうか?」


「まりょくをあつあつやびりびりにして、ぐるぐるのちからにかえるのです!」



 鉄道は共和国の広大な土地に突貫工事で敷かれたばかりの最新交通手段である。その原理年端もいかない幼女が知っているという事実は驚愕すべきものであるが、既に数々の開発品とビジネスを成功させてきた今となっては、ゆっくりと早く流れていく景色同様にスルーされることとなる。

 荒野を泳ぐ鉄の塊は昨今の共和国の技術力を示す代表例であるが、その内部でも同じように代表的な技術の一端が振舞われていた。内地で獲れたとされる『海水魚』を使った料理の数々である。

 

「……ここの魚介類は冷凍されているはずなのに味が落ちていないですね……。しかも採取されてから大分立っているはずなのですが。」


「かちかちになるりょーいきをはやくかけぬけるのです。」


 緩慢に凍結した場合、0~マイナス5℃の水が氷になる氷結晶生成温度帯を通過する速度が遅く、氷結晶が大きく歪になる。それが食品の細胞を破壊し、結果として長期間の保存に耐えられなくなったり、解凍時後の味を落としたりする事になる。一方で、対象物を均一かつ急速冷却した場合は、氷結晶は小さく歪ならないため細胞の破壊、劣化を起こさすに済む形である。


 数日の鉄道旅行を満喫したアーキモト一家は、共和国の首都であるオアシス都市にて国王との面会を予定していた。大王国を代表する商家として、国王からの書簡を届け、献上品とともに友諠を結ぶ手筈となっていた為だ。クラリスはその際に技術開発者との面会することを期待していたが、共和国側のガードは固くそれは叶わずじまいとなる。


「申し訳ないが、そのものは今研究所に籠っておりましてね……。

 どんな人間か?ですか?そうですね、きみよりは少し年上ですが、可愛い女の子ですよ。」


 齢にして30程になろう現共和国国王は、どうやらその少女に相当入れ込んでいるらしく、今のクラリス位の年齢の時からあの手この手で援助してきたようである。国という後ろ盾がついた事で彼女の研究開発はかなりの速度で進み、結果的に共和国も急速な発展を遂げた形となる。色々な意味で先見の明があったとも言えなくもない。


「ろりこんはしねばいいのに。」


 自分と(おそらく昔の姿の)名も知らぬ彼女に相好を崩す国王に対して思わず悪態をついたクラリスであったが、前世の言葉で漏らしたため、周囲に理解されず事なきを得た。

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