~転生後 ジル⑮~

「……既にこと切れているのです。」


 大司教に辛くも勝利した僕らは、先行者を追って奥までたどり着いた。だが、そこにはSランカーの姿はなく、残っていたのは激戦の爪痕と魔神と思しきものの死骸だけであった。


「あれの親玉をたった二人で……。」


「道中の魔物たちを軽々と屠っていたのもそうですが、やはりとんでもない実力の方々のようですね。」


 『分け与えられた力』にすら大苦戦していた僕らにしてみれば信じがたい事だが、Aランカーの上位、Sランクにもなると大司教すらも赤子の手をひねるように倒せるのだどろうか。


「何で出来ているのか知らないけど、この建物の壁をぶち抜いていくなんてどんな威力の技なのかしら!」


「……痕跡を見ても想像がつかない程です。どれほどの大魔術を放てばこうなるのでしょうか?」


 残骸から見知らぬ先行者たちの実力に思いをはせる僕ら。何はともあれ、大司教と魔神の企みは阻止出来たのだから、これで任務成功と言っていいだろう。


「ひとまずギルドに戻って報告しよう!この場に留まってもいい事は無さそうだ。

そして、一息ついたら打ち上げだ!この激戦を生き残れた自分たちと、見知らぬSランカーたちに乾杯といこう!」


 こうして、僕らのAランカーとしての初仕事は幕を閉じた。冒険者ギルドの活躍により、各地で企てられていた反乱もどうにか最小限に抑える事に成功し、神都に集められていた要人たちも大半が無事。僕たちも報酬も大分弾んでもらえ、懐も温まって良いこと尽くめだ。

しかし、その日僕はこの世界のルールを再認識することとなった……。


「なっ!?し、死んだ?一体どうなっているだ!?」


 ぬいぐるみもどきから転生者の中から死者が出た事が告げられる。幸いな事に探し人ではなかったが、これは由々しき事態だ。それに加えて……。


「戦乱?折角魔神の企みを阻止したというのに……?」


 人間たち同士による争いの息吹が直ぐそこまで迫っていた。そしてそれに巻き込まれるのも時間の問題であった。


「ようやく始まったようじゃの?折角、儂が力を貸してやっておるのだ!せいぜいあがいて見せよ!」


 現況を楽しむかのようなその声に現実を突きつけられたながら、僕はこれから始まる戦いに体を震わせる事しか出来なかった。

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