~転生後 ジル⑪~

 冒険者ギルドへ到着した僕らは、直ぐに奥へと通され、ギルド長より依頼詳細について説明を受ける事になった。


「ジル殿たちには、大神殿への潜入と、魔神討伐をお願いしたいと考えております。」


 ある筋よりもたらされた情報を基に冒険者ギルドが極秘裏に調査した結果、この世界における宗教の中心である大神殿が、事もあろうに魔神の乗っ取られており、建国式典への出席のため各国要人が集まったタイミングで人間界への宣戦布告を行う可能性が高い事が判明した。また、同時に各国の神殿を中心に挙兵し、中枢部を抑える計画も立てているらしい。その未然防止のため、ギルドは数少ない協力者ともに総力を挙げて対抗する。その本丸となる大神殿攻略を僕らに任せたいという。


「Aランク冒険者、しかも聖剣を所有されているジル殿であれば、強力な力を持つ魔神にも対抗できると思い、招集させて頂きました。是非、力を貸して頂きたく!」


 そう言い期待に満ちた顔で僕に圧力をかけてくるギルド長。そんなに押してこなくても断りはしないのであるが……。

 視線に頭を押され軽く頷くと、ギルド長はほっとしたような表情を見せる。が、直ぐに何か思い出したのか、若干申し訳なさそうな表情へと変え、言葉を継ぎ足した。


「朗報、と言っていいのかわかりませんが、……実はもう1パーティーにも同じ依頼をさせて頂いております。……ああ!別にジル殿たちの実力に不安があるという訳ではありませんよ!ただ、万全を期すためには念には念を入れて、というだけです。

出来れば協力して事に当たって貰いたかったのですが、先方に断られてしまいまして。いやはや困ったものです。」


どうやら、ちょうどSランク冒険者が神都に来ていたらしく、彼らにも同じ依頼をしていたようだ。ギルドでもあまり所在を掴めていないらしく、招集しようにも出来ずにいたのだが、運よくこの時期に神都を訪れていたため、急遽追加で依頼を出したという。


「おかしな連ち――、面白い方々ですが、腕は確かです。現存するどの冒険者よりも強さ、圧倒的なものが感じられました。」


自身もかつて高ランク冒険者であったギルド長の見立てでは、Sランクの名に恥じない実力があるので、魔神退治の戦力として十分あてにできる、という事のようだ。因みに、ギルド長自身も引退して衰えているとは言え、まだまだ現役でもいけそうな体が維持されており、素手で殴りあったら今の僕でも勝てるかどうかかなり怪しい。


「珍しい神人と魔人の2人組。神人はジル殿がお持ちの聖剣と同列と称される数少ない超武具、神剣を保有。魔人はかつての魔族の上に君臨していたという大魔王の血縁という噂があり、大魔王が使用していた魔鎌を愛用。実際に振るわれているのを見なくても分かります!。どちらも恐るべき力の持ち主、下手すれば2人だけで国の1つや2つ落とせるやもしれん。ああっ!恐ろしい!」


「神人なんて私ですら会ったことないわね!大魔王の話も、たまにおばあ様がされていた気がするけど、子供がいるなんて話は初耳!二人とも是非会ってみたいわね!」


 自分の言葉に乗っかって勝手に盛り上がるギルド長と、その補足情報に目を輝かせるセリーヌ。(レア種族+聖剣レベルの超武具)X2という強力コンビ。正にチートでは?と思ってしまうが、戦力としては確かに申し分ない事だろう。そして、やはりどちらか(或いは両方?)が転生者である可能性も高まったと言える。


「分かりました。その2人と上手く合流できるかは分かりませんが、可能であれば協力して事にあたらしてて頂きます。」


「おお!宜しくお願い致します!」


 具体的な大神殿攻略に関しては、証拠を集めて告発、皆で団結して対抗する、というステップを踏むための時間的猶予が無いため、魔物たちが宣戦布告を逆に唯一の機会と定め、そのタイミングにて突入を行うという作戦だ。詳細を打合せした後は、祭りの日当日までは悟られないよう準備を進める(といっても、アイテム類の準備以外では、僕らにできるのは英気を養う事位だ)運びとなった。平たく言えば、祭りを満喫する、という事だ。

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