~受付嬢のターン?~

「ジ・ル・さ・ん!楽しんでますか?」


「えっ!?ど、どうしてここに?」


 突然降ってきた声に驚いて顔をあげると、そこには大きな谷間――ではなく本物の受付のお姉さんが立っていた。ちょっと離れた位置から上半身を僕の方へ大きく傾けて覗き込んでいた。


「私も来ちゃいました♪どうせ、休みも余ってましたし、冒険者になり立ての頃からの付き合いですので、是非お祝いをしたいと思いまして。」


 そう言ってお姉さんが上体起こすと、谷間だけでなく全身が目に入ってきた。

 足が長く見えるよう鋭角に配置された布により、申し訳程度に隠された肢体がまぶしく、ここまでくると目に毒、としか言い様がないくらいだ。普段、受付に立っている時は、フォーマルかつゆったりとした服装により隠されていて気づく事が出来なかった我が侭ボディが惜しげもなく晒されている。


「ちょっ、ちょっと!一体どうしたんですか!?混乱魔法でも掛けられているのですか!?」


「たまのバカンス、それにこんなリゾート地だと、ついつい開放的になってしまいますよね。

あれ?こういうの、嫌いですか?」


 よく分からない理由を述べ、再度僕の顔を覗き込んでくる。心なしか瞳が湿って見え、直視出来ずに視線を下げたが、そこには豊かな双丘が待っており、逃げ場が無い。

 くっ、殺せ……!


「い、いや嫌いじゃない、ですけど……!」


「はいはい。そこまでなのです。ちゃんと序列は守るのです。仕方無いので共有させてやってもいいですが、お前は最後なのですよ。」


 そこへ割って入ったクロエたちにより引き剥がされた受付のお姉さんは、他数人により引き図られ、何処かへと連行されていった。


「ちょ、ちょっと待ってください!私の方がジルさんとの付き合いが長いのだから、こちらに優先権が……!いや、やめてー!!」


 ……何だか知らないが、助かった。

 そう胸をなでおろした僕がふと視線をあげると、そこにはいつの間にか戻ってきていたクロエが立っていた。そして、更なる内なる自分との戦いの開始を告げられる。


「さあ、ジル。バカンスは長いですので、頑張るのですよ?」


――お慕い申しております~♪一生尽くしてゆきます~♪

 幻聴のように聞こえる歌声に見送られ、僕はどうやったらこの局面を切り抜けられるかを必死に考えながら、クロエに連行されていった。

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