~クロエのターン~

「無いものには無いものなりの戦い方があるのです。」


 リリアーヌの次に現れたのはクロエ。そして、その恰好はこの世界においては限りなく違和感を覚えるものだった。

 旧ス、スク水だと!?敢えてこれをこの世界に投入する必要性がどこにあるというのだ……!


 紺色のレオタードもどき?に覆われているのはリリアーヌと殆ど変わらぬ程度の起伏に乏しい肢体。胸元には『くろえ』と書かれた布が文字同様雑に縫い付けられている。


「く、クロエ?どうしてそんな恰好を?」


「どうですか、ジル?僕のこの美しさは、なのです。

 この水着を見た時、ぴーんときたのです。僕の持ち味を十分に活かすにはこれしかないと。」


 何だかよく分からないが、勘で自分の魅力を最大限引き出すであろう水着を選びあてた、という事らしい。わざわざこれをラインナップに加えたであろう転生者に拍手――いや、怨嗟の声を送らざるを得ない。


 リリアーヌ同様、『NO!タッチ!』とは対極ともいえる苛烈な攻勢をかけてくるクロエに対し、圧倒的な自制心をもってこれに耐えきった頃には、折角リゾート地でリフレッシュしていた精神も疲労感で満杯となっていた。

 僕はまだ彼女をあきらめてはいない……!

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