~リリアーヌのターン~

「……ここが天王山。先陣は私。今日こそは決める。」


 一人海辺で休んでいると、妙に気合の入った――リゾート地に似つかわしくない戦場へと赴くかのような声とともにリリアーヌが僕のもとを訪ねてきた。因みにバカンス期間は基本自由行動で、食事・買物・海、など各々思い思いに島を満喫している。リリアーヌの事だからてっきり食欲を満たすのに掛かり切りになっているのだろうと思っていたのだが……。


「ど、どうしたんだい?折角の休暇なんだから、もっとリラックスして過ごした方が……。」


 そう声をかけ、起き上がろうとした僕を制したリリアーヌは音もなく僕へと近づいてくると、何を思ったかそのままのしかかってきた。


「ちょっ……!急に何を!?」


「……静かにする。」


 普段の眠たそうな目とは打って変わり、僅かに潤み、光を湛えた瞳で僕を覗き込んだリリアーヌは、そのまま僕の体の上で寝転がる。僅かな膨らみを隠した布と健康的な弾力を湛えた肢体が押し付けられ、体をくすぐられた。スポーティながらも露出が多い恰好、色気を感じる訳ではないが、何とも言えない感覚に奇妙なざわつきを覚える。うっかり抱き枕代わりにしてしまいたいという欲求に駆られたが、最大の自制心をもっておし止まる。そ、そんな餌で俺様が釣られクマ――。


「……ジルの上は安心。でも、危険も望むところ。」


 そんな僕の心の内を知ってか知らずしてか、幸せそうな顔のまま目を閉じて寝息を立て始める。気が済むまで微睡んだのち、リリアーヌは満足げに僕から離れていった。

 ――僕は彼女を探さないといけないんだ。

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