~転生後 ジル⑧~

 突然だが、僕らは冒険者ギルドが保有するリゾート施設――、もとい島へとバカンスに来ていた。大陸から南に暫く下ったところにあり、温暖な気候と手付かずの自然、そして浜辺を満喫できる、ギルドのお偉いさん御用達の場所だ。何故、こんなところに一冒険者である僕らが来ているか、といえば、平たく言うとギルドへの貢献が認められたから、だ。聖剣を入手したあと遺跡探索以降、同じメンバーでパーティーを結成し数々の依頼・冒険をこなした結果、晴れてAランクへの昇格が認められた。

そのお祝いとしてここへ招待された形になる。因みに、Aランクの冒険者パーティーというのは、この大陸でも2桁いるかいないか、という数しかいない。Sランクに至っては数10年に1組出るかでないか、という稀な存在だ。といいながら、つい最近にSランクの冒険者コンビが誕生したという噂を聞いたのだが。ボーナスをつぎ込んだ優秀な転生者である可能性が高く、探し人である確率はかなり高いと考えているので、会う機会が得らないかと模索している最中だ。因みに、Sランクまでいくと、多数の特典が得られるという。年間フリーパス位の気軽さでこの島の利用が可能だとか。

 実は、ここに来るのは2回目だったりする。1回目はパーティー結成の契機となった遺跡探索の直後。僕らがキマイラを倒した後、現地入りした帝国の調査隊に事情聴取されないよう、一時的に隔離――避難させられた形だ。余計な情報を漏らさせないためには、そもそも会わせなければいい、という事だ。暫くの間島で大人しくしている必要はあったが、不自由はなく、感染対策でリゾートホテルのみの島に隔離されているくらいの快適さだった。次は是非落ち着いた時に、と思っていたので、今回の招待は願ったり叶ったりだ。

 貸し切りという訳ではなく島には別の冒険者やお偉いさんとその家族らしき人たちも多少いたのだが、鉢合わせが無いように配慮された配置となっていたため、顔を合わせる事もなく、ゆったりと海を眺める事が出来ている。水着――これも恐らく転生者が開発・普及させたのだろう――を着て、ビーチチェアに寝転びつつ甘美な南国のトロピカルジュースを味わいながら。

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