~エヴリーヌ視点~

 魔物に警戒しながら進んだ自分たちを待っていたのは、キッチンとダイニングだけでした。魔物の姿はなく、直ぐに下への階段を発見するに至りました。


「魔物の姿は無し、か。こういうセーフエリアの後にボス戦が待っているのが定番なんだよな。セーブポイントだとかが設置されていて。」


「と、取り敢えず一休みしていきませんか?キッチンの設備が使える、という訳ではありませんが、食事をとるにはちょうど良いかと。下に強力な魔物がいる可能性が高いのでしたら、万全の体勢で臨むのがよいのではないでしょうか?じ、自分が食事の用意も致しますので……。」


 ジルさんは少し考えるそぶりを見せましたが、直ぐに了承してくださいました。


「よし!エヴリーヌさん、すまないが食事の準備を頼む!

 他の皆はその間にアイテム類の確認と、戦闘準備を!」


「わ、わかりました!頑張ります!」


 皆さんが戦闘に備えをされている間に、食事の準備をします。こんなこともあろうかと、簡易的な調理器具を持ち歩いていた甲斐がありました。ジ、ジルさんに、料理の腕を示す良い機会ですし!ここはチャンスを活かして胃を掴ませて頂きます!

 使われなくなって久しいであろう竈を拝借しつつ、火の通った食事を、皆さんを待たせないよう短期間で仕上げました。


「……旨い!もう一杯!」


「犬っころはもう少し遠慮するべきなのです。僕は成長期なので問題ないですが。おい、脂肪の無駄遣い娘!もう一杯よこすのですよ。」


 表情には表さないものの美味しそうに平らげたリリアーヌさんと、淡々と食べ切られたクロエさんがおかわりを要求されます。実年齢としてはそんなことはないのですが、微笑ましい妹たちのように見えてきます。


「まだまだあるので、お二人とも大丈夫ですよ!ジルさんの言葉を信じるなら、ある程度減ったとしても問題なさそうですし……。」


「まあ、食べ過ぎて動けない、というのは困るので程々に、ね?

 でも、すごく美味しいですよ、エヴリーヌさん。……僕にもおかわり貰えます?」


「……くすくす。はいはい。ただいま!」


 ジルさんにも気に入って頂けたようで、何よりです!

 流石に、皆さんもプロの冒険者。戦いの前に満腹になるまで、という事はせず、適度なところで切り上げられました。私も急ぎ食事を終えると、片付けに取り掛かります。


「私も手伝うわね!それと、とても美味しかったわ!ありがとうね、エヴリーヌさん!」


「いえいえ、どういたしまして。……自分の事は『さん』づけにせずエヴリーヌとお呼びください。では、そちらの食器をお願いいたします。」


「分かったわ!私も『セリーヌ』でいいから!宜しくね!エヴリーヌ!」


 セリーヌさ、……セリーヌにも手伝って貰った事で、後片付けは短時間で済みました。

 その後は、下にいるであろう『強敵』戦に備え、アイテム類のチェック、配分を行います。


「ジルと私は前面に出るので、いざという時のための回復薬を1つ、2つで十分ですね。

 クロエさんとセリーヌさんは後衛なので多めに、と後攻撃系のものも。エヴリーヌさんは魔力回復系を主体に、ですね。リリアーヌさんは……、要りますか?」


「……使い方がよく分からないので、要らない。いざとなったら後ろに戻る。」


 ステファニーさんがテキパキと仕切られて、アイテム配分も殆ど時間を要する事なく完了しました。

 ……リリアーヌさん、それで今まで生き抜いてこられたなんて、逆にすごいですね!

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