~リリアーヌ視点~

「硬いのと透明なの……。」


 階段の降りた直ぐ先は大きな通路、その奥には透明な奴――レイス?が2匹と、金属の塊――ゴーレム?が1体見えた。あいつらは殴ろうとしても、手が通り抜けたり弾かれたりするから、面倒臭い。


「こちらに向かっては来ない、か?近づく前に準備はできそうだな。」


「……、こ、こちらは道具置き場のようです!あちらが襲ってこないようなら、まずここを調べてみてはどうでしょうか?」


 大きな通路を挟んだ反対側には雑然と小物が置かれた部屋。まずはそこでアイテム漁りをする事に。私が見てもよく分からないので、ジルと他の雌に任せることにした。

 魔物たちの動きを見張りつつ、他の雌たちを観察してみる。


「むぅ。中々立派なのが多い……。」


 ジルを共有するにしても、一番手は自分でありたい。ジルの嗜好がどちらだかまだ分らないが、人間の雄は大抵大きいのを好むという話だ。それだと自分がちょっと不利。


「エルフと竜人は大したこと無いが、他二匹は結構……。特に半魔族が脅威?」


「何か失礼な事を考えていないですか?犬っころの視線に不愉快なものを感じるのです……。」


 竜人に感づかれたので慌てて視線を逸らす。ジルの篭絡方法は後で考える事にしよう。今は見張り役に徹する事にする。極端に若い雌を好む人間もいるらしいので、若しかしたら自分の方が有利という可能性もある。そんなことを考えていると、程なくして探索が完了した。


「ふむ。あいつらに有効そうなものはあまり無いか。ダンジョンで見つかるアイテムは、直ぐに活用できるようなものになっているのが定番なんだが……。

まあいいか。アイテムの分配は後で考えるとして、まずはあいつらをどうにかしよう。」


「……取り敢えず、先行して殴ってみる。」


 レベルを上げて物理で殴ればいい。猪突猛進!!猪突猛進!?

 ジルからゴーサインが出たので、早速突撃しようとしたが、そこで竜人から待ったがかかる。


「待つのです。拳に魔法をかけて殴れるようにしてやるので、しっかり働くのです。」


「……黒いものを感じる。でも、あまり逆らわない方が得策。」


 竜人が何か唱えると、拳が温かくなって光だす。よく分からないが、これであいつらを効果的に殴れそうな気がする。

 様子を見ながら皆で近づき、適当なところで駆け出して殴りに行く。


「あまり刺さらなそうだけど、援護してあげる!」


 そう言ってエルフが矢を放つ。普通なら通り抜けるだけだけど、矢じりも私の拳同様にぴかぴかしており、透明なのに突き刺さった。


「……邪魔!!」


 怯んだ隙に、レイスを腕で薙ぎ払う。よかった。ちゃんと殴れた。

レイスたちの間を駆け抜けた私は、そのままの勢いでゴーレム目がけて飛びかかる。


「遅い、です。」


 ゴーレムが腕を振り上げて私を迎撃しようとしましたが、その動きはあまりにも鈍重。振り上げきるよりも早く、私の拳が胸元に突き刺さります。走り込んだ勢いと体勢の悪さが重なり、そのまま仰向けに倒す事に成功しました。好機なので、そのままマウントをとってたこ殴りにします。


「全然手が痛くない!?」


 一撃で硬い装甲をぶち破るほどの威力は出ないですが、殴り続けていると徐々にヒビが入っていきました。とはいえ、相手もただ殴られているだけではなく、今にも壊れそうな腕を伸ばして掴みかかってきます。


「……簡単に捕まったりはしない。身動きできないのはもうこりごり。」


 寸でのところで飛びのくと、鼻先を巨大な指が通り過ぎ、空を切りました。


「これで!!」


 そこへすかさずジルが襲い掛かり、ゴーレムへ魔剣を力いっぱい振り下ろす。既にひびが入っていた体はそれに耐えきれず砕け散った。

 いい雌として、雄をサポートできた気がする。次は私に襲い掛かってくるよう、誘惑するべし。

 ジルがゴーレムを屠るの時を同じくして、レイス達も他の雌たちによって片付けられていました。


「片付いたようなのです。もう魔物もいないようですので、この階の部屋をもう少し調べてみるのです。」


 この階にはまだ実験室?と書庫が設置されていたので、次の階へ進む前にもう少し調査をする事となった。私は戦力にならないので、見張りに専念する。


「魔動器の開発?聖剣の力を解析し、それを基にした強大な武器を生み出す研究、か。

 とすると、ここにはそのどちらか、あるいは両方が眠っている可能性がある、か?」


 一通り調査が終わった段階で、ジルはそう総括した。よく分からないが、強い武器がこの遺跡の中に眠っている可能性がある、という事みたい。 その強い武器を確認すべく、更に下の階へと歩を進める。

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