~他者視点 エルンスト・ライゼンガンク~
「……まったく。団長にも困ったものです。もう少し口には気を付けて頂かないと。
それ以外では優秀な人なのですがね。」
前衛の任に着いた私は、数十人の部下たちと馬車から少し離れて先行する。ここは帝国の大動脈、そしてつい先日に皇太子殿下が通られたばかり、という事もあり、整備・警備は行き届いている。現状この国でも随一の安全な街道ではあるものの、油断はしない。部下との連携を保ちながら周囲を警戒しつつ進む。
「団長の言い様も分からないではないですが……、おっといけませんね。任務に集中しなくては。」
余計な考えを振り払い、周囲の警戒へ意識を集中させるが、やはり『掃除』が行き届いているだけあって、何も不審なところは見つけられない。そして、遂々、昔の事を思い浮かべてしまう。
団長同様に、私も姫様には返しきれない恩があります。特に、父の汚職を止めて頂いた際の事は今でも忘れられません。父は国の要職についておりましたが、事もあろうか他国の貴族と通じ、その上皇帝陛下の弑逆まで計画しておりました。
私は父とさほど仲が良くなかった事もあり、汚職・計画には全く関わっておりませんでしたが、どこかで父が何かやらかすのではないかという不安を持っており、そして我が身可愛さに知らぬ振りをしておりました。そんな私に、姫様は、突然指差し告げられました。
「貴方、このままでは処刑されてしまいますわ!」
当然、最初は仰られている事が全く信じられませんでした。突然すぎた事もありますが、純粋に幼く愛らしい姫様の悪戯かと。しかし、その後の説明を聞くにつれ、常々感じていた違和感・不安と見事なまでに合致している事が分かり、徐々に信じるようなりました。何より、とても10歳児とは思えない説明構成・論理力に驚かされた事を憶えています。後ろに控えていた強面の団長が恐ろしかった、という事もありますが。
「私に協力して下さい。そうすれば、貴方を救って差し上げる事が出来るはずです。」
姫様を全面的に信じ、協力する事を決めた私は、団長とも協力しつつ(といっても、団長は頭脳労働や隠密作業に向いていませんので、基本姫様の護衛でしたが)、父の内偵を進めました。
そして、得られた証拠を基に糾弾の準備をしていた矢先、弑逆の計画が急きょ動き始めのです。幸いな事に、それは未然に防ぐ事が出来ました。その功績と、姫様の強い取成しがあったお陰で、事件は内々に処理され、ある程度の特権・領地はく奪などの罰はうけたものの、私自身は処刑を免れる事が出来ました。
その後、光栄にも姫様の専属騎士団にお誘い頂いた私は、全てを賭す覚悟でお引き受けしました。
「……どうやら、何事もなく最初の街には辿りつけそうですね。
まだまだ先は長いので、気を引き締めて行きましょう!」
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