~他者視点 クラウディア・ヴェルトナー~

「ふわぁぁぁ!全く暇よねー!何かこうパァー!と、こう景気のいい事が起こらないかしら?」


「……流石に不謹慎。クラウはもう少し緊張感を持つべき。」


 宿の部屋に着くなり声をあげた私に対して、同室のカミラが横やりを入れる。普段通りの感情の籠っていない表情だけど、若干がその眼が私を馬鹿にしている!気がする!


「あら?逆よ。適切な緊張感維持のため、適度なイベントが必要だ、と言っているの。」


 適当に返してみたものの、カミラからの反応は薄い。いつもの眠たそうな目を、もの言いたげに私へ向けている。

 自分でも護衛にあるまじき言動かと思わないでもない(少しだけ)けれど、今回は実質ハイジと話しているだけの簡単なお仕事だもの。多少は大目に見てもらいたいものよね。ほら?私位の大物ともなれば、それ相応の活躍の場が必要でしょう?何せ見ての通りの天才美少女魔術士だし?細々と刺客を屠るとかは、幸薄そうなフリッツとかにやらせておけばいいのよね。まあ、あいつだと逆に返り討ちにされそうだけど。


「それにしても、ハイジもよくやるわよね。皇族の責務だか何だか知らないけれど、よくあんな眠たそうな会談をいくつもこなしていられるわ!」


 これで幾つ目だったかは、天才たる私も流石に憶えていないが、行く街行く街で、嫌な顔一つせずお偉いさんとの会談・会合を行うハイジの勤勉さには感心する。

 ハイジは勤勉なだけでなく、私程ではないにせよある種の天才でもある。突然よく分からない施策を打ち出すが、その悉くが成果をあげており、国の繁栄に繋がっている。それに、人を見る目も確かだ。何せこの私に目をつける位なのだから。

 もう何年も前の事。突然ハイジに呼び出された私は、転籍の誘いを受けたわ。


「私のお友達になって下さいませんか?今なら三食昼寝付き――とはいきませんが、貴方に見合ったヒト・カネ・モノを特典としてお付けしますわ!」


 当時、低脳どものやっかみのせいでまともな研究資金も得られず、暇をもてあましていた私は、ハイジの提案に乗っかった。凡人では、幾ら相手が皇女とはいえ、10歳をちょっとまわった位の幼女の提案をまともに受け取りはしないだろう。だが、私はその頃行われていた突飛な施策の発案者がハイジであることも、そしてそれが徐々に効果をあげてきている事も知っていた。そして、何より、天才たる私と通じる何かをハイジに感じたわ。それが要請に応じた一番の理由ね。……け、けっして、三食昼寝付きに惹かれた訳じゃないんだからねっ!

 そして、ハイジは誘い文句通りに、十分な人員・予算・設備を私に提供してくれた。そして、天才たる私はそれを十二分に生かし、数々の素晴らしい発明を世に送り出してきた訳!南方共和国の発明家何て目じゃないんだからね!後、ハイジが時よりくれるアドバイスも、不思議なくらい私のアイディアのかっちり嵌って役に立ったわね。そういったところも、フィーリングがバッチリ合っている感じ。

 まあ、要するに、私とハイジはある種の運命共同体?ベストフレンズ?みたいな奴な訳!アニマル系ってことじゃないわよ?私としても、ハイジに何かあったら困るので、きっちり護衛はするつもり。この天才美少女魔術士に任せておきなさい!!

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