問い肆

【今日は何の記念日?】

 今日は、久しぶりにマリアとデートの日だった。


 待ち合わせは、駅の中央改札にある時計塔の下。

 いつも人がたくさんだけど、ここなら間違うことはない。


 彼女との約束の時間は午前十一時。今はその十五分前。 

 これから一緒に早めのランチをして、近くの水族館へ行くプランを立ててある。


 ほどなくして、マリアがやってきた。

 

 いつもはジーンズが基本のラフな格好がほとんどなのだが、今日の彼女は可愛らしい花柄のワンピースを着ていた。メイクまでバッチリしている……普段はうっすらとファンデーションをしているくらいなのに。張りのある健康的な肌と、彫の深いハッキリとした顔立ちに盛られた化粧は、普段のマリアとは比較にならないほどのギャップをつくり出していた。


 か、かわいい……エモい! 萌え♡


 どうやら見つめ過ぎていたようだ。

 僕の反応を見て、彼女は頬を紅く染めて言った。


「あ。やっぱり気づいちゃった?」


 え? 何に? 何も気づかなかったけど?


「今日はフタヒロとの特別な日だからね、気合い入れちゃった!」


 ……今日ってなんか特別な日だっけ?

 ……なんだろう? さっぱり分からない。


 正直に言うべだろうか?

 それとも会話しつつ探るべきか?


 僕にゆっくりと考える時間はなかった――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る