【優しくするのはキミにだけ?】

「関川さん。今度入ってきた後輩の優奈ちゃん、すごく可愛いじゃないですか?」


 と聞いてきたのは僕の後輩の都梨子とりこ

 なので、優奈ちゃんは僕の後輩の後輩にあたる。


「そうかな? あんまり気にしたことなかったけど」

「髪型とか服装とか、関川さんの好みなんじゃないですか?」

「うーん、そんな風に思ったことはないけどなぁ」

「本当ですか? なんか優奈ちゃん、いっつも関川さんの後ろについてるし」

「まぁこれでも先輩だからねぇ」

 

 と、急にジトッと上目づかいで睨まれた。


「でも優奈ちゃんには特に優しくないですか?」

「そうかな? 君が入ってきたときも、なるべく優しくしてたつもりだったんだけど……違った?」

「違ってないですけど……どうやら私、自分が特別だと勘違いしてたみたいです」

「…………」

「関川さん、聞いてます?」

「ん? あ、あぁ……」


 どっかで地雷を踏んでしまったようだ。

 こういう時、なんて応えたら良いのだろう?


 毅然きぜんとした態度で都梨子とりこを納得させるべきか。

 曖昧あいまいな態度でこの場をはぐらかすか。


 僕は一呼吸して、沈黙を破った――。

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