第25話気づき始めたその時
僕らは夏休みに入った。結局今も亮太のことを思い出すことはできず、存在しないはずの記憶と感覚に頭がクラッとするときがある。
ある意味学校に行かなくてすむ分そこはありがたいところだ。できればこの夏休み中に記憶が戻るといいな。
自分でも大切だったってのはよくわかるから
***
LONE【仲良しメンツ】
愛衣(それじゃあさみんなで思い出の場所に行かない?)
晴人(思い出の場所?)
愛衣(正しくは河合くんとやってきたこと見てきたことをもう一度再現するみたいな)
夢(それ良い!)
春風(私も賛成)
愛衣(じゃあこの場所に1時半集合ね)
中村(俺も行っていいか)
愛衣(もち!)
長谷川(ごめん!今日用事あっていけない)
愛衣(りょーかい)
指定された場所は僕と夢の最寄り駅だ。
とりあえず僕と亮太の中学校の思い出を巡る
みたいだ。
けれども僕はそれが無駄だと知っていた。
学校ですら思い出せないのに他にどんなところに行ったら思い出せると言うのだろうか?
だからこれは新しい思い出作りに過ぎないのだ。
今日だってどこか行くたびみんなが思い出した?と明るい笑みを浮かべて聞いてくる。
そのたび首を横に振る。
「だめだったな」
「ごめん」
「晴人が謝ることじゃないよ。ゆっくりでいいから思い出していこうよ」
「……うん。ありがと」
「晴人……」
ぼそっと聞こえた声は少し哀しげで、僕の心を読まれているような夢の声と愛衣の目差し。
僕は気づかないフリをした。
「思い出せはしなかったみたいだが、楽しかったな」
「中村が素直にそんなこと言うなんて……」
「いちいちうるっせぇぞお前は」
「でも確かに楽しかった」
「そうだね」
亮太のことを思い出せないことは辛いけど、やっぱり今を大事にしたい。僕の忘れてしまった記憶に囚われるとりも新しい思い出を作っていきたい。
もしかしたらまた、亮太のことを少し思い出して辛くなってもきっと支えてくれるだろうから
「なぁ夏休みの最後に夏祭りがあるんだけどみんなで行かない」
その意見を否定する人は誰1人いなくて長谷川さんも大丈夫とのことだ。この景色を忘れたくない
だからこの夕焼けを目に焼きつけていたい。
あと1ヵ月はもってくれ……
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