第22話亮太の初恋
「お前に話たいことがあってさ」
昼休み俺と亮太のベストプレイスに来ていた。
2人で話したときにしか使わなくなってしまったがその場所はやはり人気はなく誰も使っていなかった。
「話したいこと?」
「前に俺にも好きな人がいるって言ったろ」
「そうだっけ」
そんなこと無かったような気がするけど
「覚えてないかお前が星川さんと小林さんと3人で初めて登校してきた日にどうして彼女つくらないのかって聞いてきただろ」
確かにそんなことがあったような。でもそんなことあったら忘れないと思うんだけどな
「まぁいいやお前星川さんと付き合ったんだよな」
「そうだけど」
「好きか?」
亮太がこんなにもくどいことが今まであっただろうか?真剣な様子で聞く亮太に違和感を覚えながらも
「もちろんだよ大好きだ」
「そっか!なら良かった」
意図をはかりかねて首を傾げると亮太がそれに気づいたのか答える。
「実は俺ずっと前から青山さんのことが好きだったんだ」
ドキッと心臓が高く鳴って、頭を鈍器で殴られたような衝撃が走る。そうか亮太の遠回りな質問の意図を理解した。
「それっていつからだよ」
「お前が好きな人ができたって言う前から」
「ならどうして僕に協力しようとしたんだよ」
さっきの言葉のせいか胸が締めつけられるような悲しい痛みが心をイラつかせる。
「お前の初恋を知ってたからだよ。あの時俺も好きっていったらお前は諦めていただろ。勝負もしようとせず、お前には勝てないって好きって気持ちを切り捨てるだろ」
亮太はどんな気持ちだったんだろう。亮太に出会ってから彼から好きな人ができたってことは1度も聞いたことがなかった。
「初恋だった。だけど晴人が親友だから、大切だから、協力するって言ったんだよ」
なんでだろうな。僕には星川さんがいるのにそれでも辛いって気持ちがあるのは。愛衣はどんな気持ちで俺らと一緒に登校してきたんだろう。
その瞬間愛衣の笑顔を思い出す。
不器用な笑顔を
「なぁ今度は俺に協力してくれないか」
決定的な一言だった。もしかしたら顔が引きつってるかもしれない。頭を下げる亮太の姿に断るなんて選択肢は消されてしまった。
「わかったよ協力する」
「本当か!ありがとう」
作り笑いは上手くできているかな。亮太だったら幸せにできると思う。だけど、初恋の呪縛を解いてくれた春風をとられると思うと苦しくなった。
亮太のついていた嘘と愛衣の浮かべた笑い
僕はあまりにも人の気持ちを考えてなかった。
亮太が知らない相手なら。せめて友達なら断れたかもしれない。けれども、親友なんだ。
***
「今日デートしない?」
「良いよ」
その日の放課後僕は夢に誘われた。場所はまさかの夢の家だ。昼休みのことは結構心に来ていたが夢の笑顔を見てたらそれを覆い尽くすほど幸福感が心を満たす。家に着くと夢の部屋にあんないされた。部屋の中はシンプルなデザインの家具を使っているがおかれている物は僕にはよくわからない可愛いものらしきクッションやぬいぐるみが置かれていた。
「何しよっか」
「考えてなかった」
「家に決めたのに?」
「本当はどこでも良かったの晴人がいれば」
「あ、ありがとう///」
「あ、うんどういたしまして///」
可愛すぎなんだけど、恥ずかしすぎる。
「晴人さ今日なんかあった?」
「え?」
「何もなかったら良いんだけど表情が暗かったから悩み事なら心配のるよ」
今日誘ってくれたのはそういうことか。優しいな夢は。だけどこの事は色んな意味で話せないな。
「質問していい?」
「どうぞ」
「夢はどうして好きになってくれたの」
「うーんとね、中学の時は私に普通に接してくれたからかな。あの時多かったんだ私と会話もしたことないのに告白してくる人。それが嫌でね。私のこと本気で好きでもないのに外見だけで告白してきて、私は申し訳ない気持ちでふってるのに」
亮太も同じ気持ちだったのかな。僕なんかと違ってよく告白されていた亮太はあんまり嬉しそうじゃなかったから。
「高校で会ってからは優しさとかっこよさに惹かれた。愛衣と春風からたくさん話を聞いたのそれで私も助けてもらった。だからって言うと軽いって思われるかもしれないけど、私のために全力になってくれる人がいるっていうのが嬉しくてしかたなかったから」
「そんな風に思っていてくれたんだ」
「でも、今一番嬉しいのは初恋が実ったことかな」
えへへと頭を触る夢が可愛くて、その言葉が嬉しくてついキスしてしまった。カァっと赤くなる夢の顔はまたからかいたいなと思わされる
「きゅ、急にキスするの禁止///」
「わかったよ……」
「で、でもたまになら……」
「かわいい」
「ズルい///」
何だか嬉しくて、さっきまで心に引っかかってたことが全部解き放たれた感じがして夢に抱きついて少しだけ涙を頬に流した。
「どうしたの!」
「嬉しくて幸せでこうしたくなっちゃた」
「そっか私も幸せだよ。だから何かあったら私を頼ってほしいな」
「うん、約束する」
互いに惜しむように離しても夢の温もりは残ってて暖かいなと感じる。僕は夢が好きだ。それだけ忘れなければいいだから今度は亮太の初恋に僕が協力してあげたいと今は思う。
「晴人は私と結婚したい?」
「当たり前だろ」
「じゃあ高校を卒業したら結婚しようよ。」
「気が早いね」
「だって、私は晴人を手放したくないも~ん」
「僕も夢を手放したくない」
夢はにっと笑って僕にキスをした。
「仕返しだよ」
窓から差し込む夕日に照らされた夢は可愛いけれど色っぽかった。
「今日は色々ありがとな」
「彼女だからね」
「……」
「ちょっと、無言ならないでよ恥ずかしいじゃん」
「つい、可愛くてじゃあね」
「うん、バイバイ」
惜しむように手を振り続けてから歩き出す。
明日からはもう迷わない。
僕は夢だけが好きなんだ。
帰り道夢とLOENをしながら家路に着く。
「ただいまー」
弾んだ声で家の扉を開く。すると母さんが思い詰めた悲しそうな顔をして口を開いた。
「亮太くん交通事故で亡くなったそうよ」
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