第16話彼には彼なりの正義がある
合同練習が終わり片付けに入ると斎藤くんが自慢気にこちらへ向かってくる。
「やぁやぁ晴人くんのクラスは確か3位だったね」
「そうだけど」
「ちなみに僕のクラスは1位さ!」
「そっかぁーでも斎藤くんって速いの?」
「まぁアンカーってところかな」
全然気がつかなかった。速いんだ斎藤くん
「君のクラスはどうして速い人を前半に持ってきたんだい」
「多数決でそう決まった」
「晴人ってそんなに足速くないよねどうして2回走っているのかな」
「走りたい人がいなかったからだよ」
なんでこう嫌味なこと言うのかな絶対友達いないでしょ
「俺、リレーで1位とったら告白しようと思ってるんだよね」
「え!誰に」
「君のクラスの青山春風ちゃんに」
え?……何こいつちゃん付けしてんの?喧嘩売ってるのかな、買ってやるよキザ男
「へぇ~春風に告白ね」
「な、名前呼びな、なのかい、晴人」
「一緒にご飯とか食べる仲だけど」
「そ、そうか俺はね彼女と同じテニス部なんだ」
「そういえば言ってたねー」
「彼女から俺の話聞いて」
「ない」
「そ、そうなのかでも、君は青山ちゃんと仲が良いんだよね」
「ある程度は」
「じゃあ協力してよ」
え?まさか協力を頼んでくる。今までマウント合戦みたいなのしてたよね、正気?やっぱり喧嘩売ってるのかな
「頼む俺は本気で彼女が好きなんだ」
斎藤くんの表情は見たこともないほど真剣で頭を下げてきた。
これじゃあ、断れないじゃん……
「わかった良いよ」
「本当かい!嬉しいよ」
斎藤くんはいつものキザっぽさがなくなるほほど喜んでいた。普段からそんな感じにしとけば良いのにな
お願いされたことは3組がリレーで1位をとったら春風を校庭の真ん中に連れてきてほしいとのこと。恋敵とはいえ約束は守るもし斎藤くんが1位をとれたら僕は彼女を連れてくるよ。それで告白を受け入れたとしても
「だけど、1つだけ言っておくよ斎藤くん。リレーで1位を譲るつもりはないから」
「もちろんだよ、互いに
2人は作業を止めて長い握手を交わした。話してる間も片づけなんてやっている暇でもなく2人で語っていた。
「お前ら!サボらずとっとと片づけろ!」
「「は、はい!」」
斎藤くんは片付けた後の去り際。薫で良いよと言って教室へと帰っていった。ほんと、キザなやつだよ薫は……って!まだ机残ってるじゃん!薫の野郎許さない
***
「長谷川さん」
「大宮くんどうしたの?」
放課後、今度はちゃんと遅くなることを愛衣につたえて長谷川さんに会いにきた。
「ちょっと時間ある?」
「大丈夫だよ」
「中村のこと聞きたいんだ」
「裕木のこと?」
中村が不登校になったのは僕のせいでもある。それに長谷川さんの彼氏だよ。実はいい人かもしれない。教室から人がいなくなってから話を聞いた
長谷川さんと中村は幼馴染みらしい。
「私は元々気が弱かったからいつも気にかけてくれて、優しくしてくれてたんだ」
「じゃあどうして中村はいじめを」
「それは私のせいなんだ」
長谷川さんいわく小学生までは守っていただけだったが、中学生になってからそうゆうことが恥ずかしくなったのかクラスの中心的な存在になることで、長谷川さんを守るようになったとか。めっちゃ良いやつだし、可愛いな中村。山本をいじめた理由は長谷川さんを襲おうとしたからだという
中村の彼女だと知って元々中村のことを嫌いだった山本は本人ではなく彼女を狙ったとか。事前に気づいた中村はそれを止めて手を出させないようにいじめた。山本がそんなクズだったのか、それなのにそっちに加担して、中村のやり方はあったにせよ、そんな奴を不登校にさせてクラスから居場所を奪っちまったなんて何やってんだよ。
僕は自分を偽善者と言いながら心の中で良いことをしていると思っていた。善人のつもりだった。
だから僕は償わないといけない。
長谷川さんに中村に……
「ごめんね、あんまりしたくない話だったよね」
「気にしないで、裕木のことを正しく知ってもらえる人がいるだけで十分だから」
「あのさ中村の家教えてくれない」
「良いけど」
中村の住所を聞いて、愛衣の場所へ向かう。
当然のようにいる星川さんと3人で帰る。
「おまたせ」
「大丈夫だよ」
「私はたくさん待ったから今度一緒に出掛けてよ大宮くん」
「じゃあ、私も行きたい」
「愛衣は大丈夫なんじゃないの」
からかうように笑う星川さんに愛衣はごめん~待ったから私も行かせてと抱きつく。
「じゃあ3人で行こうね」
「僕の意見は聞いてくれないの」
「待たせたのは大宮くんでしょ。だからこの前の私みたいにお礼をくれても良いんだよ」
星川さんは自分の頬を指で指しながら近づいてくる。僕はあの日のことを思い出してつい、頬を触ってしまう。それに愛衣はぷくーっと顔を膨らませて不満そうな顔をする。
「2人とも内緒話、私にも教えてよ」
「私は別に良いよ。だけど、私から言うのは恥ずかしいから大宮くんが言ってね」
頬を赤くする姿に愛衣はますます、不安な顔になって僕を問い詰める。
「晴人、何があったの!教えてよ!」
「何もないから落ち着いて」
「酷い!なかったことにするなんて……」
「星川さんからかってるでしょ」
「ごめん、ごめん。」
こうやって今日も日常を過ごしていく、ただ星川さんは本当に心臓に悪いことを言ってくるので勘弁してほしい
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます