第15話不穏な空気はいつの間にか充満する
合同練習それは1学年全クラスが集まり、団体種目を行い競い合ってレベルを高くしていこうというものだ。ようやく僕もギプスを外せるようになり体の調子を整えているところだ。前半は綱引きを行い後半はリレーをする。体自体は割と動かず機会があったので、ギプスのない違和感ぐらいしか僕にはない。綱引きは総当たりなので、1試合1分で決着をつける。そのためスタミナよりも瞬発力なパワーが最重要になってくる。1組はサッカー部が多くスタミナや瞬発力なら1番強いかもしれないが綱引きにおいては不利だ。1位になるにはリレーで上位をとることが必要なのだ。
「俺らが序盤で差をつけるから後半の奴らは追い越されないように走れよ」
体育祭は運動できる人達にとっては活躍の場。このクラスはお世辞ではなく可愛い人が多い。モテたいとゆう下心が大小あれどきっとあるのだろう
こんな上から言ってる僕は目立つことはできないし、静かに終わらせたいと思ってる。僕だって春風に良いところみせたいけど、なんなら余裕で春風の方が運動神経は良い。各クラスが位置につく
順番は内側から1組、3組、5組、4組、2組になっている。これはじゃんけんによって決まった。
先生が笛を加えて、スタートの合図を出す。
走り出した生徒の距離はあまり離れることはない
最初は速い人同士の戦い亮太は先頭を維持したまま次の人にバトンを渡す。歓声が走る生徒の背中を押すように1組はどんどんと距離を開けていく他のクラスは速い人を温存しているようだ。
「亮太お疲れ」
「ってもまだ2回目があるけどな」
「僕だってあるんだよ、それも亮太より短いスパンで」
「まぁまぁ、お互い頑張ろうぜ」
そんな雑談をしているといよいよ1回目の僕の番こっからは平均的なスピードの人達と遅い人それに亮太だけ。一方で他のクラスはだんだんと速い人達が解放されていく。距離はまだ十二分にあるけど、怪しいラインだな。バトンを受け取り全力で走る。頑張ることしかできない。真っ直ぐ前を向くのは苦手な僕はやや下を向いて走る。声援が僕の足を加速させていく。速い人が走ったアドバンテージのおかげで、1人で走っているような気分になる。
「頑張ってー」
星川さんの綺麗な声がかすれた歓声を突き抜けて僕の耳に入る。なんだか照れくさい気分になりながら次の走者へバトンを渡す。止まると共に息は上がり、肩がぜえぜえと息をする。
「晴人くんお疲れさま」
「お疲れ晴人」
「うん、疲れたよ」
「まだ2回目残ってるんだよね」
「あと5人は走ったらね」
「やっぱりスパン短くない」
「後で変えさせてもらうよ」
息を整えることすらできないまま位置に入る。
テイクオーバーゾーンから出ないように走り出してバトンを受けとる。もうすでにアドバンテージはなくなりつつありすぐ後ろにはもつ他の走者がきている。僕よりも速い。距離はなくなりもう抜かされそうだ。
「大宮くん頑張ってもう少しだよ」
この大勢の中よく声が通る。自分の名前が入ってる応援は力になる。すぐ近くの走者が抜かそうと隣に出ようとする。負けるかよ、さっきの分までアドレナリンが分泌されるような感覚が全身を巡り、1人分の距離をひらいて、亮太にバトンを渡す。
「頼んだぞ!亮太!」
「任せろよ」
爽やかに言う亮太が縮まった距離を離していく。
さすがだな。レーンから離れ、1組が並ぶ列の後ろにつく。
「かっこよかったよ大宮くん」
「星川さんのおかげだよ」
「え?」
「星川さんの応援が耳に届いてさ、頑張れた」
「良かったよ、頑張って声出したから」
その後虚しくどんどんと抜かされて、結果は3位
雰囲気はギスギスしている。前半走った組が口々に文句を言い出す。予想はしていた。前半に速い人を詰め込んだら後半厳しくなるに決まっている
「本番お前らのせいで負けたら許させねぇからな」
「待ってよ、後半は速い人ばかりで俺らには厳しいよ」
「なら次は速い人後ろにしようよ」
激化して手が出ても困る。この2人をほったんにクラスがギスギスするのは嫌だしね。確かにやる気の面で言えば運動が苦手な人達にとってはやりたくもないことかもしれない。適当にやられてさらに喧嘩を買うのも大変なことになる。
「とにかく僕が走者の順番考えてくるから」
「わかったよ」
それでも雰囲気の悪い日々は続き、運動できる組ははっきりと文句を言って、運動できない組は裏で文句を言う。とにかく次の合同練習まではなんとも言えないな。
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