第8話青山さんの悩み

次の日僕と愛衣は10年間分の距離を抱えながら学校に登校していた。少なくとも僕はやっと高校生として1歩進めた気がする。


「晴人は良いの私と登下校して」

「愛衣が嫌ならやめるけど僕は嫌じゃないよ」

「嫌じゃない……私は晴人に好きになってもらうって決めたから少しでも一緒にいたい」


そんなことを言われると照れてしまう。そうゆう真っ直ぐなところには今も弱いみたい。


「晴人って家で何してるの」

「本読んだり、ゲームしたりしてるかな」

「どんな本が好きなの」

「感動系とかミステリーを読むかな」

「今度で良いからおすすめの本を教えてよ読みたいから」

「じゃあ今度貸すよ」

「良いの?」

「毎日読んでるわけじゃないから平気」

「ありがと」


屈託のない笑みは高校生の君を見るようになった僕には綺麗過ぎる。あの時の笑顔とは違った魅力

を持っていてドキッとする。あぁほんとに心臓に悪いよ。いつもの通学路はなんだか初めて歩くみたいだった。教室のドアを開けて席に座る。


「おはよう亮太」

「おう、晴人」

「まだ、亮太は腫れものみたいだな」

「良いんだよ別に俺には晴人がいるしさ」

「あいかわらず仲良いね2人とも」

「おはよう青山さん」

「おはよう」

「テニス部って朝練とかないの」

「朝練はないかなうちのテニス部はそんなに強くないから結構緩いよ」


ようやく1歩踏み出せたから青山さんのこと知りたいとゆうか仲良くなりたい。


「テニス俺やったことないんだよね」

「僕もテニスはないな」

「2人とも今日部活くる?」

「え?良いの」

「一様顧問の先生に言う必要はあるけど問題ないよ」

「行こうぜ亮太」

「うん!行きたい」


亮太は僕が青山さんのことを好きなのは知っている。それもあって協力してくれているのかもしれないな。


「じゃあ放課後2人は体育着に着替えてから来て」

「愛衣も連れてきて良いかな」

「もちろんだよ」


青山さんは愛衣達のところへ行って話に混じった


「良かったな晴人」

「ありがと」


放課後僕達は更衣室で体育着に着替えてから向かう。テニスはルールなんて知らないから不安だな愛衣も晴人も運動神経めっちゃ良いからね。僕だけだめだめなのは恥ずかしい。


「2人ともこっち、こっち」


青山さんは練習着に、愛衣は僕らと同じく体操着に着替えていた。この学校はテニスコートが3面もある。昔は強かったらしいが顧問が変わって数年今は大会とかにも出てはいないらしい。


「これ、貸し出し用のやつ」

「ありがと」

「僕らルールとか知らないけど大丈夫?」

「うん、多分初めてだとコート内に入れられるぐらいだと思うからラリーするから」


一様どんなものか試しにトスで出してもらったボールを打ったけど違和感がすごいある。それにネットになったり、線を越えてアウトしてしまう。

それに比べて亮太と愛衣はやればやるほど感覚を掴んで普通にラリーできるレベルだ。


「すごいね2人とも」

「球技は得意だからな」

「運動は苦手じゃないから」

「2人とも初めてだよね」

「そうだぜ、晴人教えてやろうか」

「頼むよ」


亮太と青山さんに教えてもらってようやくラリーをできるようになった。多分かなり不格好だけど楽しい。

亮太に関しては普通に速いボールを打ち込んでるよ。2時間ほど楽しんで部活も終了となった。そのまま4人で帰ることとなった。


「河合くんの上達スピードにはびっくりしたよ」

「でも、サッカーより全然難しいわ」

「それはサッカーに慣れてるだけでしょ」

「まぁそうだな」


いつもの場所で愛衣と別れて、僕と亮太、青山さんの3人だけになる。


「青山さんもこっちなの」

「大宮くん達も?」

「そうだよ」

「ってごめん俺学校に忘れ物したもどらねぇと2人で帰っててくれ」


走った亮太を止めるのは無理だった。多分だけどあいつなりに気を使ってくれたんだろうからありがたく甘えさせてもらうことにした


「帰ろっか」

「そうだね」


学校とは違って電車に揺られながら2人で帰るのは初めてでなんだか不思議だ。


「テニス部の友達こっち方面の人いないからいつも1人で帰ってるんだ」

「こっから家までどれくらいかかるの」

「30分くらいかな」

「1人でわりと暗い時間を帰るのは寂しいよね」

「そっか、大宮くんも愛衣と帰ってるから1人なのか」

「だからいつも電車乗ってる間はスマホイジって退屈をしのいでる」

「私も同じだよ……ちょっと前までは」


何か悩んでいるような声だった。悲しそうな怯えているような表情だった。


「何かあったの」

「なんでもないよ大宮くんに話すことじゃないからごめんね変な心配させて」


そんな会話をしてるときだった。満員電車とは言わないほどの座る席がなく立っている人がまばらにいるなか、1つの手が青山さんに向かって伸びていた。その太い手は大人の男のものでお尻に伸びかかっていた。僕はすかさずその手と青山さんの間に入りこんだ。男はチッという舌打ちをたてて、その手を引っ込めた。


「青山さんもしかして」


電車のドアの近くで隣に立って話していた僕らの立ち位置は青山さんを守るために間に入ったため壁ドンのような至近距離になっていた。青山さんからする桜の香りに鼻腔が刺激される。

近すぎる。急いで隣に移動して元の位置に戻る。


「ごめん!」

「あっ、うん。こっちこそごめんねそれとありがとう」


僕らは互いに顔を逸らして謝る。顔が熱い……しばらく顔を見せられないよ……


「さっきの話ってこのこと」

「うん、この時間帯だと席に座れないから最近はずっと痴漢されてて、だけど怖くて声を上げられなくて我慢しかできなくて誰にも相談できなかったの」

「じゃあ僕がどうにかする。解決できなくても解消はする」

「迷惑かけられないよ」

「迷惑じゃないよ。見て見ぬふりはできないし、これ以上悪化したら大変なことになるから」

「ありがとう……大宮くん」


好きな人にそんな目で言われたら意地でもどうにかしたくなる。


「しばらく家の近くまで送るよ」

「え、でも駅違うでしょ」

「そのくらい良いよ僕がここで降りたらまたくるかもしれないから」

「ごめんね迷惑かけて」

「気にしなくて良いよ1人は寂しいからさ」

「わかった、ありがとう」


僕はこれから痴漢男をどうにかしなくてはいけない。最優先はもちろんそのことだけど、僕は青山さんと一緒に帰れるのが嬉しくもあった。

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