第6話中村裕木と山本大地
土曜日。今日は愛衣と亮太の3人でサッカー選抜祝いをすることになっている。11時集合場所に向かうと2人はもうきていた。
「遅いぞ晴人」
「2人とも早いって」
「普通は集合の10分前にくるものだよ」
「ごめんなさいね集合時間ギリギリで」
「全員そろったし行くか」
選んだお店は学生が多く多少声が大きくても平気なナックル。全国にチェーン店があり値段もリーズナブルで人気だ。店につくとドリンクバーと昼ご飯とみんなでつまめるフライドポテトを頼む。
「亮太のレギュラー決定を祝って乾杯~」
「乾杯~おめでとう」
「乾杯~ありがとな2人とも」
そっから30分ほど会話を楽しみ盛り上がっていた
そろそろ山本くんの話をするか……
「2人とも大地を助けてほしいんだけど」
「もちろんだよって、僕もそのこと言おうと思ってたんだけど」
「山本くんのことだよね。できることがあれば協力するよ」
「晴人は知ってると思うけど昨日の大地の早退は裕木が無理矢理キーパーやらせて体にボール当てられまくったからなんだよ」
「……」
「レギュラーになれなかった理由を理解してないんだよあいつは」
いじめとも言えるその行為の犯人は中村グループの連中だとしても、どうやって守っていくかが、難しいところだ
「できるだけ一緒にいるってことも難しいだろうからなそれに大地だけ呼び出されたら結局意味ないからな」
「直接言っても無駄だもんね」
愛衣の言葉どこか過去を見ているようだった
「裕木のようなタイプには刺激させることになるから危険だ」
「山本くんがどうにかするしかないのかもね」
「そうだな最終的な部分はそうしないと解決なんてしないだろうな」
「なら動画撮って脅しちゃう」
「小林さん結構怖いこと言うね」
「いじめってきれいごとじゃ解決なんてしないから悪化していくだけなんだよ」
「それが1番堅実だね先生に言うにも証拠がないと話にならないから」
「それは最終手段にしたい裕木だってその後があるからきれいごとかもだけど穏便にしたい」
「じゃあ結局山本くんを1人にしないってことしかできないね」
本人がいないなかで、本人の気持ちを勝手に憶測して行動するのはありがあ迷惑になるかもしれないから結局答えなんてでない。きっと偽善と呼ばれるだけにしかならない。そんなことは亮太だって理解してるんだろうけどそれでも助けてやりたいって思う最高の親友だから僕は協力する。
偽善に協力するとか思ってた僕はあの事件が起きたときにその場で助けることができなかった。レクリエーションのドッチボールが最悪な結果になるなんて思っても見なかった。
***
月曜日今日はレクリエーションのクラス対抗ドッチボール大会を行う日。目的は楽しんで色んな人と仲良くなること。現在その大会の開会式。司会進行はもちろん学級委員。そしてその挨拶をやりたいと言い出す者はあの話し合い活動のメンバーでいるわけがなく、滝沢先生によって僕がやらさせることになった。うん、もうわかってたよ……だけどさあの先生僕の扱い適当なんだよ。言われたの今日だよ。
「今日は待ちに待ったクラス対抗ドッチボール大会ですね。皆さんスポーツマンシップに則って楽しんでください。勝つことはぶっちゃけ後回しでも良いので僕は勝ちにいきますけどね」
「お前帰宅部だろ」
亮太のヤジが飛ぶ。おい、ちょっと笑いが起こっちゃっただろ。帰宅部がイキってるって言われちゃうでしょ。恥ずかしさに堪えかねて顔が赤くなったのは誰も知らないでくれ。開会式を終えてクラスのところに戻ると愛衣に顔赤くなってるよ、とからかわれた。今日の僕の目的は青山さんにかっこいいところを見せる…………なんて言えたら良いけどできないだって運動神経悪いもん僕。今日のレクリエーションは先生はみない。学年で楽しんでくれとのことだった。最初は1組対2組ジャンプボールでスタートだ。もちろんやるのは亮太。
副審判がボールを地面と水平に高く上げると亮太が脅威の脚力を見せてボールを叩く。よし、とりあいずジャンプボールは制した。そのボールを1人の男がとると助走をつけて投げたボールが2組の男にあたる。ピーと笛がなり、男は外野へと出る。
「よっしゃ」
「「ナイス」」
喜ぶ声の裏僕は気づいてしまった。1組の元外野のメンバーはサッカー部だってことに。嫌な予感が体中を静電気のように走る。そして今ボールを持っている2組の男はサッカー部で中村の隣でFWを務めていた男だ。不適な笑みを見せた男は鍛えられた筋肉をフルに使って山本くんを狙い定める
そのボールは真っ直ぐに伸びて山本くんの顔面に当たる。
「顔面セーフ」
審判のジャッチで全てを察した。これは狙ってる
嫌な予感は連続して当たるもので2組の元外野2人もサッカー部だ。中村のカリスマ性の象徴である強さは人を惹きつける。僕ら高校生なんて簡単に流されてしまう強い者に
「亮太これまずいよ……」
「まさかこドッチボールを利用するなんて」
「どうする」
「俺がボールをキャッチする。サッカー部の攻撃が全部大地を狙うものってわかってるならとれる」
頼もしい親友だよ。でもねこのゲーム事情を知らない人からしたらそこまで変に見えないんだよ。向こうだってサッカー部だけでドッチボールをやってるわけじゃない。それに山本くんはそこまで運動神経が高くないし、弱気な僕とにたタイプ狙っても違和感はない。それでもサッカー部の攻撃を亮太は全部キャッチして反撃する。だけどそう長くは続かない。2組のFWが守ってることに気がついたのかフェイントをかけられて亮太は当てられてしまった。
やられた……今度は僕がどうにかする番だ。運動神経はなくとも頭は良い方でね。僕は山本くんの近くに行って少しだけ前にでる。
サッカー部じゃない相手なら当てられる確率の高い方を狙うよな。予想通り2組の男は僕をめがけてボールを投球する。あえてそのボールに触るそして山本くんの体の方にとばす。ピーと笛の音がなる。
「ダブルアウト」
成功だ。これなら2組は狙うことはできない。
「晴人お前凄いよさすが親友だ」
「これなら平気でしょ」
「ありがとう大宮くん助かったよ、怖かったよ」
感謝する声と重なるようにピーと笛が鳴っていく
当てられたのは1組のサッカー部と中村の取り巻きの2人だ。まさかそこまでする気じゃ
「どうしたんだ晴人」
「今度は中村自らかもしれない」
いい人過ぎる亮太にこんな考えは持ち合わせていないようで、意図を組み込めてない。ボールを持ってるのは中村だ。中村は斜めにいる2組の女子を狙うフリをした。それは僕にしかわからなかったと思う。全力のボールは女子の横を素通りして
そのまま山本くんのお腹にクリーンヒットする。
その瞬間さすがに亮太も気がついた。狙っていることにつまりこのゲームを辞める以外で逃げ道はない。山本くんはお腹を抱えてうずくまっている
そのときだった想像もしてなかった方向からのボールが山本くんの背中を鋭く当てる。隣で行われている3組と4組の試合から飛んできたボール。
本当にいじめってのは徹底的にやってくる。僕は気弱だけどいじめられたことはなかった。小学校では低学年から仲良い人がいたし、中学校は亮太と友達だったこともあり交友関係は良好だった。
「山本くん保健室に行こう」
「ダメ……それはできないんだ」
なぜかは答えなかったけれど、そこには譲れないものがあるようでもう八方塞がりだ。
「外野でも俺なら守れる」
「河合くん辞めて……僕のことは守らないで」
すがるように言う山本くんのことを聞くしかなかった。僕は壁になるには弱すぎる。これも言い訳だ本当は怖いだけなんだ。彼を絶対に守りたいと思えるほど関係は深くない。だから僕たちはこのあとの試合も見て見ぬふりをするしかなかった。
顔面を当てられ、お腹を当てられ、痛いのを必死に一筋の希望に掴むように耐える姿は見てられない。いよいよ最後の試合だ。結果なんてもう気にもならないただ横目に見ることしかできない僕のことを嫌いになっていた。でもこの試合は明らかに違った。それはドッチボールではなくて蹂躙それは僕たち以外の目から見てからもだった。見せつけるようにボールを当てていく。
「中村くんやめて!先生を呼ぶよ」
「勝手に呼んでろ」
この場に先生はいない時間はかかる。愛衣の静止の声で止まることはなかった。青山さんも止めたいようだったけど、相手は男子サッカー部体格は一回りも大きい相手を愛衣みたく止められない。
愛衣は走って先生を呼びに行った。彼女は自分のこととか考えていない。あの頃と同じだった。
幼稚園の頃だけは弱虫といじめられていた僕を必ず助けてくれて、付き合ってるとかいじられようものなら逆に喜んでしまうような彼女には好きという感情とともに憧れもあった。
先生達が駆けつけると中村達は怒鳴られた。当然だ。このまま呼び出しだろうなとホッとした気持ちになっていると中村はありえないことを口にした。
「違うんですよ先生これをやったのは俺達ですけど首謀者は河合亮太なんですよ」
「何を言っているそんなわけ」
「本当ですよ彼は僕たちに物をとらせては自分が山本の友達のフリをして好感度を上げてるんです。その証拠に彼のバックには山本の無くなった物が入っています。」
不適な笑みを浮かべた中村は自分は被害者だと言いたげな顔で亮太のバックを指さす。先生はありえないとため息をついて
「河合確認するぞ」
「はい、どうぞ」
先生は亮太のバックから物を取り出す。消しゴム、シャーペン、漫画が出てくる。
「それ僕のです!」
山本くんは光を掴んだようにまるで知っていたようにはっきりとそう言った。僕は亮太に近づいていつはめられたのかと聞くと亮太は裏切られたような絶望した顔で
「大地に消しゴムを貸してくれって言われてそのままバック持っていってもらったんだ」
そのときか……山本くんが守らないでと言った理由はこれか……今回の目的は山本くんではなくてレギュラーになった亮太ってわけだったのかよ。今すぐにでも山本を殴りたかった。よくも親友を君を助けようとしていた人間を裏切ったなと叫んでやりたかった。けれどそれを察した愛衣に手を握られて止められてしまった。
「お前ら後で職員室な」
ドッチボール大会は中止せざるおえなかった。この場で冤罪の公開処刑をされた亮太は悪口を叩かれた。最低だ、性格最悪だ、イケメンだからって、と悪だとつるし上げられた。そのあともあることないこと叩かれて次の日亮太は休みレギュラーも取り消しになったと聞いた。山本は被害者だと可哀想にと慰められていじめられなくなった。きっと山本は知っていたこうなることを……
ふざけるなよ、僕は手を握りしめて
「このまま終わらせるかよ」
と声にだして覚悟を決めた。
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