第193話 タカの第六感と吟子の家族愛
その日の夜、理佳子から天斗に電話が来た。
「もしもーし、たかと君?」
「おう、理佳子…」
「たかと君…クリスマスってどういう予定?」
「あっ、そうだな…今回は理佳子ん家行こうかな…いいか?」
「うん!もちろん!たかと君…元気ないみたいだけど…大丈夫?」
「そうか?元気有り余って走ってきたところだけどな…」
たかと君…なんか隠してる…また何か頭を悩ませることがあったの?どうしていつも私の知らない所で…どうして私に心配かけるの?ちゃんと話してよ…隠し事されるとかえって辛いよ…
「たかと君…クリスマス…無理なら無理でもいいんだよ?」
「何言ってんだよ…全然問題ねーよ!」
「そう…なら良いけど…」
理佳子…何か感づいてるな…余計な心配かけたくねぇ…せめて全てが終わるまでは…
「クリスマス楽しみにしてるぜ!」
「うん…」
理佳子は電話を切った後も、天斗のいつもとは違う雰囲気にモヤモヤしてじっとしてはいられなかった。そして薫に探りを入れる。
「かおり?元気?」
「理佳!どしたの急に…何かあった?」
やっぱりかおりの様子も何か変…いったいそっちで何が起きてるの?
「かおり…教えて…今そっちで何が起きてるの?たかと君の様子も変だし…いつも私だけ外されてる気分…」
「理佳…大丈夫だよ!何も起きてないよ」
理佳…大丈夫だよ…たかとには危害は加えさせない!理佳はたかとと幸せになりな…
「そう…ならいい…」
たかと君もかおりも何も教えてくれない…どうしていつも私は一人ぼっち?私だってちゃんと知りたいよ…何も出来ないかも知れないけど…
ふと見るとタカがじっと理佳子を見つめている。理佳子は何か不思議な感覚にとらわれる。タカがとても悲しそうな目で見ているような…何かを必死に訴えようとしているような…理佳子は胸騒ぎがしてならない。
ねえタカ…タカも何か感じるものがあるの?たかと君達の身に何か起こってるの?教えて…お願い…
薫は佐々木日登美の件、自分が狙われてる件を耳にしてから小山内家には近づかなくなった。会えばまた情緒不安定なのがバレてしまいそうで怖いのだ。せっかく温かく迎え入れてくれた家族に今の状況はとても言えたものではない。吟子の顔を見れば覚悟が弱くなってしまう。今回の一件は中途半端な気持ちで立ち向かえるほど甘くはないと悟っている。安藤の件とは危険度が比にならない。間違いなく薫は二度と戻って来ることは出来ないとわかっている。
吟子さん…もう一度抱き締めて欲しかった…
その時薫の電話に着信…清…だ…
「もしもし?清どしたの?」
「母ちゃんがかおりん呼べって…」
吟子さん…ダメ…今あなたに会ったら…私の覚悟が揺らいでしまう…
「ごめん…ちょっと用事があって…」
その時小山内の携帯から吟子の声が
「かおりん?何か急用?」
「お母さん…急用ってわけじゃないんだけど…」
「だったらおいでよ!今ピザとケンタッキー買ってきたから一緒に食べようよ!清迎えに出すから!」
「お母さん、ほんとに今日は…」
「かおり…約束したよね?家族を大切にするって…家族を悲しませることが大切にするって言える?」
「……………」
「かおり、一人で抱えられることじゃ無いんだったら何故家族に相談しない!そんな薄っぺらい家族愛なら、はなから必要ないでしょ!」
吟子に一喝されて薫は泣き出してしまった。
「お母さん…助けて…」
薫は泣きながら吟子にそう言った。
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