第192話 固い決意
ここは某暴力団関係者の事務所、今回の事件の主犯である芹沢せりざわという男が数人のヤクザ達に取り囲まれていた。
「おい芹沢…お前高校生のガキ相手にいつまで手こずってんだよ!さっさとその女取っ捕まえて風俗でも沈めて代償払わせるなり何なり考えろや!」
「はい…今捜索中なんすが…肝心の佐々木って女が使いもんにならなくて…」
「バカ野郎!言い訳なんか聞きたくねぇんだよ!」
「はい…すみません…」
「オヤジも売り上げ下がっちまってイライラしてんだからよ!あの女はいい金蔓だったのに…今回の件、さっさと片付けないとこっちにもとばっちりが来るんだからな!さっさと収拾付かなきゃテメェの身の保証はないと思え!」
「はい…」
クッソォ~、あのバカ女…ブッ殺してやりてぇ…アイツが逃げなきゃこんなに叩かれることは無かったのに…
芹沢は佐々木日登美が逃亡を謀ったことによって、この暴力団の中で肩身の狭い思いを強いられる。佐々木日登美が多くの若者達を巻き込んで売り上げを上げていたのは芹沢にとって追い風だったのだが、薫との一件から徐々にその行動範囲は狭められ、売り上げがガタ落ちしたのがそもそもの発端だった。そして佐々木日登美の逃亡失敗…その逆恨みとして薫がターゲットとして上げられた。
芹沢は自分の子分達に薫の行方を追わせていた。例のライブハウスでの情報収集もなかなかはかどらず芹沢はイライラしていた。当然薫の事を売る者はほとんど居ないからだ!若者達は、ほぼ一致団結して薫を擁護している。それは、矢崎透の過去の功績が大きく影響している。佐々木日登美はこの芹沢の家で監禁され、囚われの身となっている。
小山内軍団と言われる小山内の仲間達、千葉、吉田、赤坂、大田、清原、高谷等と新入生の加藤、相澤はこの報せを聞き小山内の元へ集まっていた。
「きよちゃん…どうすんだよ…流石にヤベぇだろ?」
高谷が言った。
「小山内先輩!俺はどこまでも付いて行きますよ!あんたの生き様最後まで見届ける!」
と、後輩の加藤。
「きよちゃん…俺達は苦楽を共にしてきた。お前一人死なせやしねーよ…」
千葉も言う。その仲間達の励ましを制して小山内は
「お前等の気持ちは凄く嬉しい…だけど今回の件は高校生同士の喧嘩とは異次元だ…とても将来のあるお前達を巻き込める問題じゃねーんだ!」
「だからってお前一人が行けば問題が解決するって訳でもねーだろ!」
吉田が言った。
「だから被害は最小限にしたいんだよ…数居れば何とか切り抜けられるかも知れねぇだろうが!」
赤坂が言う。
「いや…逆だな…多くなればなるほど状況は悪化すると思う…だから…」
小山内が反論する。
「うるせぇ!きよちゃん!お前一人に無駄死にはさせねえぞ!」
そこへ天斗が現れる。
「お前ら何言い争ってんだ?」
「黒崎さん!あんたからも言ってくれ!みんなで力合わせて…」
「やめろ!」
天斗がその言葉を遮った。
「お前ら…小山内の男気わかってやれよ…この件に関われば、みんなただじゃ済まない…それをわかってるからこそ巻き込みたく無いんだろうが!」
一同沈黙する。
「いいか!今回のことは忘れろ!」
天斗がそう言って小山内と一緒に消えた。
「だけどよぉ…やっぱりあの人への恩はこういう時こそ返さなきゃ…例え犬死にしたとしても…放っておけねぇよな…」
「あぁ…」
「俺は絶対小山内先輩を死なせたりしません!」
相澤信二郎が固い決意でそう言った。
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