第194話 薫、監禁
小山内が薫をバイクで迎えに来て小山内家の玄関のドアを開ける。リビングで吟子が椅子にかけて待っていた。薫は目を伏せてリビングに入る。
「お母さん…」
「かおり?清から聞いたよ。先ずはフライドチキンとピサ食べながら話しようか」
そう言って吟子は小皿に薫の分をとって薫の前に置いた。
「さ、食べて」
「はい…」
「かおり…状況が状況だけに悩む気持ちはわかるよ…そりゃ私だってそういう修羅場をたくさんくぐって生き抜いて来たんだ。でもね、人間一人で解決出来る問題なんてたかが知れてるよ。前にもあんたがヤバかった時、いざとなったら私が何とかしてあげるって言ったじゃないか!私がヤクザに追い回された時、必ずと言っていいほど誰かしら助け船を出してくれたもんさ!て言ってもほとんどが拳さんに助けてもらったんだけどね…あの人…どんなに自分が危険な目にあおうと仲間の為ならヤクザでも物怖じしない心の強さを持ってたんだ…みんなヤクザって聞きゃブルッちまうもんなんだけどね…あの人の口癖が、未来を担う者達の目を摘むのは大人のすることじゃ無いだろ!ってねヤクザ相手に高校生が説教たれるんだよ?おかしいだろ…ヤクザも肝の座った拳さんにだけは一目置いてたんだよ…それほどまでにあの人のオーラは偉大だったのさ…」
「お母さん…矢崎拳って人はそんなに凄い人物なんでしょうか?私にはとてもそうは思えない…」
「そうねぇ…かおりにはあの人の器は見えないかも知れないねぇ…自分の父親じゃあ…」
「え?吟子さん知ってたの?」
「やっぱり?当たっちゃった?以前皆で懐かしい写真見てた時にかおりん拳さん指差して驚いてたでしょ?あの時もしかしてって思ったんだ…」
「吟子さん…」
「かおり、私たちが拳さんに嫌ってほどお世話になった恩を今度は次の世代に恩返ししなくちゃ…それが大人の務めさ…だから何も心配要らないって!」
「ありがとう…でも…それは出来ない…」
「バカ!娘がみすみす地獄に堕ちて行くのを黙って見てる親が居ると思う?心配要らないよ!かおりがまばたきしてる間に問題は解決してるさ!」
そう言って吟子は豪快に笑った。
「かおり、この問題が終わるまではあんたは私が徹底的に見張ってるからね!外出禁止だよ!」
「お母さん…そんなぁ…」
そしてクリスマスイヴ、芹沢はついに動き出した。天斗達の通う学校の回りで薫の事を聞き回る怪しげな男達が居るという情報が、天斗と小山内の耳に入ってきた。しかし、当の薫は吟子の厳しいマークにより小山内家でおとなしくしてる他無かった。
「ついに来やがったか…重森が家から出られないってのは好都合だな!」
「あぁ、母ちゃんしっかりかおりんの事を守ってくれてる…そして母ちゃん奥の手は打ってあるとか言ってた…」
「奥の手?何のことだ?」
「さぁ、それはわからないけど…」
天斗と小山内…そして小山内の仲間達がぞろぞろと校舎を出る。そして校門を出て歩きだした時、いかにもという柄の悪い連中が声をかけてきた。
「ねぇ君達…重森薫って女の子知らないか?」
「オッサン何者?」
天斗があえて聞いた。
「ハハハ…俺達はスカウトの者だよ…その女の子探してるんだが知らないかな?」
「ほう、暴力団のスカウトか…で、重森を風俗にでも入れて稼ごうってか?」
「君、知ってるみたいだね…ちょっと一緒に来てくれるかな?」
「あぁ、俺達もあんた達探してたから丁度良かった…」
そして天斗と小山内は残りの連中に先に帰れとジェスチャーした。
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