第169話 魅惑の吟子

吟子はサングラスをかけ、上は白いTシャツ、下はショートパンツ姿で薄いTシャツに下着が透けて見える。元々美人系な吟子はとても高校生の息子が居るとは思えない程のプロポーションを保っていた。砂浜ではしゃぐ薫を見て思わず笑みがこぼれる。

あの娘ほんと無邪気…まるで小さい子供みたい!可愛いねぇ~…吟子は薫に心から愛情を注いでいた。まるで本当の娘のように。

吟子は持ってきたパラソル付のキャンピングチェアに足をくんで座っている。そして吟子の妖艶な姿に若い男達もまた釘付けになっていた。


薫が


「お母さーん!」


吟子に向かって大きく手を振っている。


吟子もそれに応え大きく振り返す。

かおりん…何故あなたは私の娘として産まれて来てくれなかったの?小さい頃からあなたを育ててあげたかったわ…可哀想なかおり…出会うのがもっと早ければ…吟子は薫の心情を考えると思わず胸に込み上げてくるものを感じた。ただ懐いてくれるから可愛いという訳ではない。母の愛を知らずに育った薫が、一心に吟子にその愛情を求める姿が不憫でならないのだ。

清にも感謝だね…こんなに良い娘に巡り合わせてくれて…お前も幸せ者だよ…あの子はきっと家庭を大切にする!お前にはこれ以上無いってくらい良い女だよ…吟子はまだ薫の父がまさか矢崎拳だとも知らずに早く嫁に来て欲しいと切に願うのであった。


「お母さん!すっごく楽しかった!ありがとう!」


「おばさんありがとうございます。私も凄く楽しかったです!」


理佳子も大はしゃぎだ。


「そうかい、そうかい!そりゃ連れてきた甲斐があったよ。そうだ!帰りは新鮮な魚介類でも食べて帰ろうか!」


「やった!母ちゃん出っ腹!」


「清…私のどこが腹出てるってんだい?」


「お母さんって…凄く綺麗…スタイル抜群!」


吟子は嬉しそうに


「あら、あんた今のポイント高いよ~!よし!お母さん奮発しちゃう!何でも好きなもの食べな!」


「いや、でも…小山内の母さんほんと綺麗…」


「うん、おばさん綺麗です!」


だんだん吟子も恥ずかしくなり


「もうわかったわかった、ありがとう!さ、ご飯食べに行くから着替えて!」


照れ隠しにそう言った。


四人が着替えに行ってる間、吟子も帰り支度をしていたが、若者から中年、はたまた年配のおじさんまでが吟子の姿をチラチラ見ながら通り過ぎていくのであった。

まだまだ私も捨てたもんじゃないのかねぇ…

男達の熱い視線を感じて吟子はまんざら悪い気はしていない。

全員準備が出来て車に乗り込んだ。


「母ちゃん、良かったな!さっき若い男達が母ちゃんの噂してたぞ!」


「何て?」


「メチャクチャ綺麗な女だったって…」


「フッ…もう一花咲かせようかな?」


「母ちゃんそれは無理!」


「あ?」

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