第157話 自ら堕ちていく

時は遡り…


石田寮…伝説の黒崎と天斗を人違いして理佳子を拐った悪党と佐々木日登美が安藤の所へ訪ねていた。


「ねぇ、安藤さん?あなたは過去に人を刺して少年院に入って、やっと出て来れたんでしょ?さぞあなたを少年院にぶちこんだ人が憎いでしょうね?」


佐々木日登美は安藤に妖艶な目つきで話しかける。


「お前…何が言いたい?」


「もし、あなたがその気なら…私が協力してあげる…安藤さん?もしあのときの当事者の女を殺ってくれるなら向こうの出方全部情報流すわ。それであなたも安心でしょ?」


「お前…何か勘違いしてねーか?俺はやっと仮退院して新鮮な空気吸えるようになったのに…何でわざわざそんなリスク負わなきゃならねーんだよ…


「あなたがその気無くても、向こうはあなたの首取りに来るわよ!ただ黙って殺られるの待つ気?」


石田は佐々木日登美の恐ろしい企みに耳を疑った。そして石田はここで佐々木にくみするふりをしてスパイとして動いていた。



そして後日、ライブハウス会場で薫は安藤の話を聞き一人で会場を出た時だった…

薫の目の前に佐々木日登美…天斗に言い寄り薬物を売りさばく用心棒として利用しようとした女が姿を現した。


「あんたは…」


佐々木日登美は神妙な顔をして立っていた。


「重森…さん…」


佐々木日登美は薫に二度と仲間に近づくなとヤキを入れられた女だ。それから佐々木は学校を退学して消息を断っていたのだが…


「何だよ…」


「助けて…お願い…私…私暴力団から脅されて、薬売り付ける売人の手助けしてたでしょ?あなたに怒られて私もうあんなバカな真似止めてまっとうな人間になろうとしたんだけど…一度踏み入れた裏社会でそんな綺麗事は通用しないの…石田居るでしょ?あいつとも組んでやってたんだけど…あいつは一人さっさと抜けちゃって…結局私一人が石田の分まで責任取らされて…お願い…重森さんの力を貸して欲しいの…もう私も抜けたいの…」


薫は今それどころでは無かった。安藤への復讐心で頭がいっぱいだったのだ。


「あんたのそんな言葉を誰が信じる?あんたはどれだけその演技で男達を薬付けにしてきた?」


「重森さん!信じて…私ももう嫌なの…もう…普通の人間に戻りたい…お願い…あなたにしか頼めない…その代わり…あなたの欲しい情報をあげるわ…安藤…あの男を探したいんでしょ?」


薫は佐々木日登美を疑っている。しかし今の薫にはそれが例え罠だったとしても、どうでも良かった。安藤と刺し違えてでも剛の仇が取れるなら…それだけで良かった…


「そう…安藤のこと知ってるんだ…じゃあ、交換条件ってことだね…」


薫はあえてこの佐々木の罠に自ら堕ちていく…

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