第156話 薫の覚悟

「小山内、重森とは連絡取れないのか?」


「あぁ、ダメだ…全く繋がらない…」


「お前らの中で重森に情報流してる奴を早く探してくれ!」


「わかってるよ!でも、やっぱりみんな姉さんには報せてないみたいなんだよな…」


「そんなの正直に言う奴居ねぇよな…」


天斗達は疑心暗鬼になっていた。



「もしもし、黒崎か…」


それは伝説と呼ばれた男、黒崎天斗にかかってきた電話だった。


「その声は…何でお前から…」


「実は安藤がお前ともう一人、女を狙ってるって話なんだが…」


「それならいろんなガセネタが飛び交って翻弄されてる…」


「だろうな…あえてデマ流して撹乱させてる奴がいるんだ、当然だよ…」


「何でお前がそんなことを…まさかお前…」


「ばーか、俺はそんなに賢くねぇよ…それに俺が安藤けしかけたところで何の得にもならねえよ!」


「じゃあ、何でわざわざそんな情報こっちに流してんだよ…」


「お前に恩返ししようと思ってな…」


「あ?何気色悪いこと言ってんだ?」


「お前のお陰で目が覚めたからよ…くだらねぇ生き方して腐った俺を…そんなことはどうでもいい!」


「んで?安藤の居場所は知ってんのか?」


「あぁ、あいつは…」


マジか…バカやろう…そりゃいくら探しても見つからねぇはずだぜ…あいつ…やってくれるよな…薫…お前は…


「おい、お前ら!もう俺達じゃ間に合わねぇかもしれねぇ…薫の仲間の方に連絡しろ!恐らくあいつらもガセネタに惑わされて迷走してるはずだ!一刻の猶予もねえぞ!」


黒崎が仲間に言った。



「もしもし、え!マジか!わかった、こっちもすぐに駆けつける!任せとけ!」


伝説黒崎の仲間からの電話だ。


「影武者、姉さんの居場所がわかった!今度の情報は確かなはずだ…一刻の猶予もない!急ぐぞ!」


「何!いま重森が危険なのか?」


「かおりちゃんは!かおりちゃんはどこだ!」


「良いからとりあえず向かうぞ!説明は後だ!


天斗達は黒崎達から得た情報をもとに薫がいるらしい場所へと向かう。



剛…ごめんね…私のせいであんたが死んだのに…私だけ幸せになんて…そんな事許されないよね…私だけ幸せになろうとするから…安藤が出てきたんでしょ?忘れちゃいけないよね…剛のことは絶対に忘れちゃ…ごめんね…あの時…やっぱり私も安藤と刺し違えて一緒に死ねば良かったのに…そしたら今ごろ…でも…大丈夫…私も…もうすぐ剛の元へ行くから…


薫は力なく歩いている…安藤が待ち構えているその巣窟へと…薫にはもう生きる気力はない。ただひとつ…自分の命の道連れに安藤を刺すことしか頭に無かった。


清…ごめんね…あんたは優しいからもっとあんたに相応しい女性が見つかるよ…お母さん…ごめんなさい…出来ることならもっと小山内家の中で幸せな家庭を感じていたかった…でも、あいつが出てきた以上私はこうするしかないの…いっぱい甘えさせてくれてありがとう…凄く幸せだった…お母さんの温もり…あなたのお陰でもう思い残すことはありません…


理佳子…兄ちゃん…ごめんね…ほんとにごめんね…そして…ありがとう…

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