第158話 なぜわからない?
天斗達は黒崎から仕入れた情報に従い安藤が居るであろう場所に到着した。
そこはかなり前に倒産した建設関係の会社の倉庫だった。そこの門の鍵は壊されており、安藤の仲間達の溜まり場となっていた。
天斗達はその門の前で立ち止まった。
「ここに居るって言ってた…」
「そうか…重森のことが心配だ…でも…あいつ…どうやってここを…」
「わからない…黒崎の話では、わざとデマ流して俺達が安藤に辿り着けないように撹乱してた奴が居ると…」
薫の仲間が言う。
「そして、かおりちゃんだけは何故かここに…もしかして…」
「超能力の類いではないな…」
「く…黒ちゃん…何でいつも俺の心を読めるんだい?やっぱり…黒ちゃん…」
「行くぞ…重森がもう既に安藤って奴と会っているとしたら手遅れかも知れない…」
「かおりちゃん…なんで…あれほどきつく止めたのに…小山内家の娘になりたいって言ってたのに…」
「姉さんの気持ちはわからなくもないよ…目の前で最愛の人を亡くしたんだからな…その当事者が再び現れたとなれば…」
一向は門を開けて敷地内に入って行く。そして倉庫のドアを開けて中に入った瞬間話し声が…
「お前もなかなか肝が座ってるなぁ…たった一人でノコノコ現れやがってよ…」
「お前の姑息なやり方を私は誰より一番知っている…剛のように余計な被害者を出したくないからね…剛はもう…戻らないんだ…お前はその罪の深さを何も理解していない…」
良かった…まだ重森は無事だ…
「……………」
「今日こそ…今日こそ剛の…剛の…」
薫は込み上げてくる悲しみにそれ以上言葉が出てこない。
「前にも言ったはずだ…俺は殺られる前に殺る…刺し違えるなんてそんなヘマはしねぇ!お前は結局無駄死にだ!大人しくしてりゃあいいものを…わざわざ蜂の巣つつきに来るとはな…」
「黙れ!今日がお前の命日だ!」
その時、小山内が大声で叫んだ。
「かおりちゃん!!!」
「清…あんた…何で…」
「かおりちゃん…何で?何でだよ…言ったよなぁ?ウチの娘になりたいって…幸せな家庭に憧れてんだろ?俺の母ちゃんの温もり感じてあんなに幸せそうにしてたのに…何でこんなところで犬死にする気なんだよ!」
「清…」
「俺達を信じろって…仲間信じろって…あれだけ言ったのに…何で!」
「もう…大切な人たちを…失いたくない…」
「重森…それを言うなら俺達にとってもお前は大切な人なんだよ…お前が死ねば…今度は俺達がお前を守れなかった自責の念に押し潰されてお前と同じ不幸を背負うことになる…どうしてそれがわからない?」
天斗が言った。
「………」
「安藤…重森を狙うのはよせ!やっと仮退院出来たんだろ?だったら大人しくしてろ!」
「あぁ?ちょっとそれはおかしくねぇか?まるで俺がこの女つけ狙ってたみたいに言うなよ…」
「なに?」
天斗と小山内が顔を見合わせた。
「俺はこの女が俺に復讐に燃えてるっつーから…こっちも仕方なく臨戦態勢敷いたんじゃねーか…」
「あ?誰がそんな情報を…」
「佐々木日登美だよ!」
やっぱりね…そういうことか…どうりで話が上手すぎると思った。
「かおりちゃん…どういうこと?」
「どうでもいいよ…今日ここで剛の仇が討てるなら…」
「重森…何を言っても届かないようだな…俺達がここに駆けつけた時点でもうお前一人の命では足りないんだぞ?」
「……………」
「重森…無駄死にするな…俺達を信じろ…剛の時のように小山内を悲しませるようなことはよせ!」
「結局俺が命を狙われる状況は変わんねーのな…」
安藤が言った。
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