第125話 よみがえる記憶

「相手が誰だろうが、例えそれが黒崎天斗だろうが、俺の理佳子を泣かす輩は絶対許さねぇ!絶対ぶっ殺す!てめぇ…不運だったなぁ…俺の女に手を出さなけりゃ長生き出来たものを…」


「フッ、良いねぇ~、世間知らずの坊やは…恐いものはまだ知りませんってか?良いだろう…たっぷり見せてやるよ…この世の地獄ってやつをよぉ~!そうやって俺にたてついて死んだ奴は数えきれねぇ…」


「クソが、わめいてろ!」


石田は本当の恐怖を人生で一度だけ味わったことがある。それは初めて伝説の黒崎天斗とやりあった時だった。恐いもの知らずで生きてきた石田にとって、その強さは衝撃を受けた。それから何度かリベンジでやりあったが…やはりレベルの違いを実感せざるを得なかった。

そんな石田にとって黒崎天斗以外は全く眼中に無かった。


「面白ぇなぁ…お前も俺の二の舞だぜ!自分の力を過信している哀れな世間知らずの坊や…そういう奴の自信をかんぷなきまで壊すのは、俺にとっては何よりも快感なんだよ!」


「フンッ、黒崎に勝てねぇ腹いせに、自分よりも弱い奴等をいじめて喜んでたってわけか…かわいそうになぁ…」


「まぁ、そういきがるなよ。この世にはどうしたって埋めることの出来ねぇ理不尽なこともあるもんさ…お前は今日それを知ることになる。自分が強いと思って生きてきたとしても、敵わねぇ相手に遭遇して自信を無くす…それは仕方ないことだ。持って生まれた資質ってもんがそうさせるんだ…まぁ、せいぜい弱いなりに頑張りな!」


天斗の右の拳が目にも止まらぬ速さで飛ぶ!

しかしその拳は空を切る。一歩引いてかわした石田がバランス崩した天斗の襟と肩の辺りの服を掴んでボディに数発膝蹴りが炸裂する。


「かはっ…」


あまりの衝撃に天斗は上手く呼吸が出来ない。

更に石田が追い討ちをかけて右アッパーを天斗の顎にヒットさせる!


「ぐはっ…」


天斗は天を仰ぎ後ろに引っくり返って倒れてしまった。天斗は意識を失っている…


「たかとぉ~~~!」


「黒ちゃーん!」


「いやぁ~ーーーー!!!!!」


理佳子…必ず俺が…助けてやる…そうだ…俺が…お前を守ってやらなきゃ…


天斗は昔の夢を見ていた。それはあのトラウマとなった事件のこと…理佳子が小学生に苛められてる…俺は必死で理佳子を守ろうとした…しかし、天斗には手も足も出せない…その時理佳子の靴が川に流された…それは理佳子にとってとても大切な靴だった。


「おい、大丈夫か!しっかりしろ!」


矢崎透の声が聞こえる。

俺は意識が朦朧としてる。


「何とか大丈夫そうだぞ。意識はあるみたいだ」


「たかちゃーん…ごめんねぇ~」


理佳子の泣き声が聞こえる…


「たかと!あんたそれでも男の子?りか守れないぐらいなら、りかをお嫁さんにするとか言うな!」


薫の罵声が聞こえる…

矢崎透が


「薫、こいつはこいつなりに頑張ったんだから」


「でも、でもどんなことがあっても男の子は女の子を守らなきゃならないって!それが男だって!父ちゃんいつも言ってるじゃん!」


「かおり…たかちゃんは…ずっと私を守ってくれたよ…」


「弱い男なんて男じゃないじゃん!もうりかに近づくな!」


そう言って矢崎薫は理佳子の手を取って行ってしまった。

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