第126話 自分の強さと醜さと
りかちゃん…どうして…行かないで……しかたないじゃん…俺は怖かったんだもん…それに相手は…おっきいし…3人もいるし…勝てるわけないじゃん…なのに…弱いってそんなにいけないことなの?
……理佳子…守ってやれなくてごめん…大切な靴を…拾ってやれなくて…
良いんだよ…たかちゃん…たかちゃんは強くなくたっていいの…優しいたかちゃんが大好きだよ…だから…気にしないで…ごめんね…私のせいで…
たかと君…たかと君…
たかと…たかと…
黒ちゃーん…
戻って来て…くれたのか?もう二度と会えないと思ってたのに…
今度は必ず…俺が…お前を…守って…
「やるからなぁ~~!」
天斗の意識が戻った。
「たかと君!」
そこには泣いてる理佳子の姿があった。
「理佳…子?」
「黒ちゃん!」
「たかと!」
俺は…気を失ってたのか?痛ってててて…顎が…痛ぇ…
「たかと君!良かった…」
理佳子は泣きながらそう言った。
「なかなかしぶといなぁ…弱ぇくせに」
「…俺は…理佳子を守らなくちゃならねぇ…今度こそは…どんなことがあっても…例え相手が誰であろうと…男は…女を…守るのが…絶対条件…だから…お前ごときに…やられるわけにはいかねぇ…」
そしてゆっくりと立ち上がった。
「たかと…君…」
「たかと…」
「ハッハハハ、ぶっ倒れて気を失った奴が言うセリフかよ」
「バカヤロウ…寝不足でちょっと落ちただけだ…こっからだよ…」
「そうかい、じゃあもう少し寝んねしてな!坊や!」
「もう、十分頭はスッキリしてんだよ!」
石田は近くに居た理佳子を払いのけた。
「キャッ!」
理佳子が転倒する。
「理佳子~ーーーー!てんめぇーーー!ぶっ殺す!!!」
ダダッ石田が踏み出して拳を突き出す!
思い出せ…重森との特訓を!力を抜いて…ギリギリで…かわせ!
ビュッ!左頬を石田の拳がかすめる…そしてカウンターで天斗の右手拳が石田の顔面を直撃!
ボコォ~ッ
石田は数メートルブッ飛んだ…
「たかと~!」
「黒ちゃん!すげえ!」
アイツ…ものすげえ破壊力してやがる…あの力…こいつ喧嘩弱かったんだよな…信じられん…
薫の仲間が度肝を抜かれている。
石田がゆっくりと立ち上がり
「ほう…なかなかやるじゃねぇか…こんなパンチもらったのはアイツ以来だ…」
たかと君が…まるで別人みたいに見える…どうして?私の知ってるたかと君はいつも土下座して謝って、絶対喧嘩なんかしなかった。人を殴ったことなんて無かったのに…やっぱりたかと君は変わった…薫の影響?私の知らないたかと君がいる…
「おい…理佳子を泣かせた奴がどうなるかちゃんと教えてやる…」
ダッ!
目にも見えないほどの速さで飛びかかり、石田に飛び膝を見舞う!石田はそれを手で受け止めたが、天斗の猛攻は止まらない。上から拳を振り下ろし、顔面を直撃しボディ、顔面と猛烈なラッシュで石田はガードするのが精一杯。天斗の重い拳に耐えきれず石田は崩れて膝を付いた…更に天斗は顔面に何度も膝蹴りを入れて石田の意識が飛ぶ!
「黒ちゃんやりすぎだ!もう意識がねぇ!」
「たかと!もういい!」
そう言って薫が天斗の身体を押さえて止めた。
「たかと!敵にも情けは必要だと教えただろ!」
「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…こいつが…理佳子を泣かした…許せねぇ…」
怒りで我を忘れて自分の行きすぎた暴力に気付いた時
「たかと君…もういいよ…私の知ってるたかと君に戻って…お願い…」
「ハァ…ハァ…理佳子…」
俺は初めて自分の強さを知った…そして…同時に変わり果てた自分の姿も…俺は…理佳子の言うとおり変わっちまった…人を殴ることにあんなに抵抗があったのに…今の俺は…俺らしくねぇ…
天斗は血まみれで倒れてる石田を見て、自分の醜さに失望していた。時には…敵にだって寛大さを…俺は…小さい…
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